第二部 大人のためのコンサート レポート 樹原涼子が込めた想い

第二部 大人のためのコンサート レポート 樹原涼子が込めた想い

8月20日(木)、カワイ表参道からピアノランドフェスティバルの無観客コンサートを配信しました。
すでにご覧いただいた皆さま、本当にありがとうございます!

第一部のレポートはこちらに書きましたが、ここからは、第二部の大人のためのコンサートレポートをお届けします。

 

 

写真はすべて、ヒダキトモコさんです!

 

ピアノランドフェスティバル2020 vol.21

出演:樹原涼子 小原孝 春日保人 樹原孝之介

コンサート詳細

第二部 大人のためのコンサート

生配信 2020.8.20  19:00~  (カワイ表参道 コンサートサロンパウゼ

 

 

歌はステキ!

過去のクラシック作品を愛でながらも、新しい曲を書き続けていくことは、今生きている私たちにとって大切なことです。過去から受け取った恩恵を、別の形で未来への贈り物とすることをライフワークとしている私は、ピアノ曲だけではなく、”ジャンルを飛び越えてごく自然に生み出すこと”を意識しています。

今回は、感染症の影響による自粛生活で、大切な人に会えなかったり、ストレスの多い状況に鬱々としている方にも音楽が届けば……という願いを、プログラムの中に込め、歌からスタートすることにしました。

 

コンサートに込めたメッセージ

長く一緒に活動してきた小原孝さんと私は「ピアニスト」と「作曲家」だけれど、小と樹の原と原で歌のユニット“HARA HARA 倶楽部”を結成、これまでもピアノランドフェスティバルの中で歌を作りつづけ、3枚のCDを制作しました。
これは、私たち自身が心から音楽を楽しんでいる姿を子供達や大人にも見てもらいたいという気持ちで続けていることで、もちろん、第一の理由は「楽しいから」です。
間違えちゃいけないとか、失敗したくないとか、カッコつけたいという思いは、表現活動からクリエイティブな部分を奪ってしまいます。
他人からどう思われるかだけを気にして音楽を習い事の枠の中だけで終わらせてしまうのは、本当に勿体無いと思うのです。

みんな、もっと自由に自分の考えを詞にしたり、曲にしたり、即興で弾いてみたり、初めは上手くいかなくても試しにチャレンジしてみるのは素晴らしいことだと知ってほしいのです。
『即興演奏 12のとびら 音楽をつくってみよう』の勉強会ではピアノの先生たちがどんどん変わり始めていますし、その影響でレッスンも変わり、成果が現れ始めています。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』も、みんなを自由にするために書いてきたテキストだということを理解してもらえたらいいなぁ。

 

言葉があるからこそ伝えられる「歌」は本当にステキです。
みなさんにも歌っていただけたら幸いです!

 

M1 “HARA HARA 倶楽部”   嬉しいあの人  作詞 村上信夫/作曲 樹原涼子 CD「風はどこから」

 

 

「大丈夫、大丈夫!」と言ってくれる人が、いつも側にいてくれたらいいですね!
私は大変なとき、おまじないみたいにこの歌を歌っています。
「僕の詞に曲をつけて」……と素敵な詞を私に託してくださった村上信夫さん、ありがとうございます!

リハーサルのときに「“HARA HARA 倶楽部”のCDにはパーカッションを入れてたけど……」と小原さんと話しているのを聞きつけた編集者の山本さんが、なんと素敵なパーカッショニストを連れてきてくれました。笠井亮さん、飛び入りでのご出演、ありがとうございました!

 

 

M2 “HARA HARA 倶楽部” 〈初演〉「遠くから」 作詞 小原孝/作曲 樹原涼子

歌にも初演が欲しいと小原さんに詞をお願いしていたら、7月後半のある日、小原さんから届きました。
なんてあったかい、共感できる世界でしょう! 自然にメロディが湧いてきました。
遠くから大切な人や仲間を思い合う気持ちを届けられたら幸いです。
(合唱用にアレンジしたらいいかも……)

 

 

例年は渋谷のさくらホールで開催しているのですが、今回はカワイ表参道パウゼからの配信コンサート。
いつもと勝手は違いましたが、音楽に、トークにと集中してお届けしました。

 

 

 

M3 ミュージカル「ひとりぼっちの夜」より「橋」 作詞 ひらたあや/作曲 樹原孝之介

次男樹原孝之介は舞台音楽(オペラやミュージカル)、ゲーム音楽、バンド活動をしながら、毎年ピアノランドフェスティバルにも参加しています。今回は、S&Dプロジェクトの昨年のミュージカルの中からとリクエストしたところ、春日保人さんに「橋」を歌っていただくことになりました。

どんなミュージカルのどんな歌なのか、熱く語る孝之介。

 

 

リハーサル中から、春日さんの「橋」の素晴らしさに、何度も「次の段取りを忘れて、ただの観客になりたい……」と思いました。ミュージカル作品の中から、こうして曲が飛び出して別の命を持つのだなと、そこに立ち会えた喜びを感じます。

 

 

 

樹原涼子ピアノ曲集から 作詞作曲:樹原涼子

 

M4  ノスタルジー ピアノ曲集『やさしいまなざし』 CD ピアノ名曲フォーユー~あなたが大好き~

M5  夢見る妖精 ピアノ曲集『風 巡る』 CD 弾き語りフォーユー~Takashi Obara 30th Anniversary

この2曲は、小原さんがご自身のCDにレコーディングされていますが、生で2曲続けて聴くのは私も初めて。小原さんの手にかかると、美しい絵の具や芳しい香水が振りまかれたように、音楽が輝き出して嬉しくなります。

 

M6 明日はいい日だ! ピアノ曲集『こころの小箱』

ピアノランドだけではなく、大人のための作品にも連弾を沢山書いています。
みなさんは連弾のパートを時々チェンジされていますか?

小原さんに連弾の魅力や良さをお話しいただきましたが、私たちもこうしてパートをチェンジして楽しんでいます。
同じ曲でも、かなり違うイメージになるでしょう?

 

 

 

M7 明日はいい日だ!(パートをかえて)

 

 

次は、ピアノ曲集の中に収めた歌曲を、春日さんと小原さんで演奏していただきました。

M8 かなしくても ピアノ曲集『こころの小箱』

M9 僕の故郷 ピアノ曲集『風 巡る』

「かなしくても」は東日本大震災の後に書いた曲。
「僕の故郷」は春日さんにプレゼントした歌で、故郷の自然や両親を思う気持ちを歌った曲です。
今年、九州や他の地域で大雨の被害を受けた方々や、故郷に帰れない寂しい気持ちを抱えた方にも届くようにと、この2曲を春日さんにお願いしました。

春日さんの優しくも力強い魅力的な声と表現力、そして歌曲の伴奏の達人小原さんの組み合わせで自作を聴ける喜びに震えた樹原でした。

 

 

 

 

音楽のメッセージ

 

ちょっとオーバーに聞こえるかもしれないけれど、音楽は私にとって、生きることと死ぬことの両方をとても近くに感じるものです。

いつも、私は今生きているからこの曲ができた、と思っています。昨日までどこにもなかった曲が今ここにある、ということは、私が生きているという証でもある。この身体が無くなってしまったら、私は曲を書くことも新しい本の原稿を書くこともできない。だから、この身体がこの世界に存在できる時間をとても大切に思っています。

そんな気持ちが、こういう曲を私に書かせるのだと思います。

誰かの哀しみは私の哀しみであり、私の切なさも誰かの切なさではないか。

 

「どんな日も どんな日も」は、亡くなった友と残された子供達への思いを。

「花」は、生きとし生けるものの強さと美しさと願いを。

どちらも、春日保人さんとのデュエットで小原さんの伴奏にのせてお送りしたので、弾き語りでバンドと演奏するとき、大ホールでオーケストラと演奏したときとも違う、濃密な演奏となりました。
お二人との共演は本当に貴重で、勉強にもなりました。ありがとうございました!

 

M10 どんな日も どんな日も 樹原涼子『“The Four Seasons” ベスト・セレクション』

M11             樹原涼子『“The Four Seasons” ベスト・セレクション』

 

 

 

M12 椿 散る 舘野泉監修『左手のためのピアノ珠玉集』樹原涼子作曲「季節の三部作」より

舘野泉先生に捧げた季節の三部作から、終曲「椿 散る」を演奏しました。
左手だけのための作曲を始めたときは、別の脳みそが必要だ!と思ったくらい、私にとってそれは別世界でした。
舘野先生が「想い出の小箱」「ふたり」をレコーディングしてくださったことをきっかけに、これまで10曲くらい書いたと思いますが、その度に大きな発見がありました。

その中でも、この曲を舘野先生に初演していただいた舘野泉《樹原涼子》を弾きたいシリーズ トーク&コンサート(2019年4月18日)は、私の父が亡くなった翌日だったということもあり、出来立ての「季節の三部作」を演奏していただいている間、ああ、父がここに来て聴いてくれている……と感じたことを思い出します。

「椿 散る」を演奏したかったのは、楽譜が6月に出版されたこともありますが、また、父に聴きに来てもらいたかったから。音楽は、過去と未来だけではなく、もう会えない人との気持ちを繋いでくれるものでもあるんですね。

 

 

M13 君は 君のままで       樹原涼子『“The Four Seasons” ベスト・セレクション』

 

「君は君のままで」を作曲した頃の話です。練習していると、小学生だった長男がどこからともなくピアノの近くにやってきて、私の顔を覗き込むのです。2番の歌詞にこんなところがあるのですが……


初めてママになったから うまくいかなくてごめん

もっとやさしくしたいのに 怒ってばかりでごめん

そこを歌うと練習していてさえ涙が溢れてしまうのを、長男は(心配してか面白がってかわかりませんが)、「ママ、泣いてる?」と見に来るんです……笑。

それで鍛えられて、泣かないで歌えるようになっていったのかもしれません。
まったく、子供を育てるというのは、人生の大事件です。
子供は親の思うようにならない、ということは「自分が子供として親に体験させたこと」でもあり、「息子たちが私に実感させてくれたこと」でもあります。

 

 

 

2つのラプソディ

M14 ピアノ連弾のための『ラプソディ第1番』

 

2014年に出版した、ピアノランドフェスティバルのために書いた『ラプソディ第1番』。
これは、折に触れて演奏してきたレパートリーで、多くの方が演奏してくれるようになりました。

16分音符が拍子と関係なく受け渡されるように錯覚する「シラミソミレ……」が延々と続く音型のスリリングさは、自分で書いておきながらどうしてこういう曲になったのか不思議!
いつだったか孝之介に「こんな曲どこにもないよね〜」と言われたときには、「そうかも〜」と笑ってしまいましたが、でも、そこが演奏していて楽しいところでもあります。

 

 

 

 

M15 〈初演〉ソロ『ラプソディ第2番』 ピアノ連弾&ソロ『ラプソディ第2番』より

『ラプソディ第2番』を書いた経緯、エピソードの数々は、noteの記事に書いたので、よかったらご覧ください。曲の生まれ方は、本当に様々なんです。

 

立派なカメラが4台並んでいるのをステージから見るのは壮観な眺めでした。
主に私の目線を撮影していた女性カメラマンの方が「うんうん」と頷いてくれていたのは、本当に支えになりました。

 

 

この作品にも、本間ちひろさんが素敵な絵を描いてくれました。
そして、コンサート当日には手書きの素敵なカードが届いて、思わずその絵をみなさんにご紹介しているところです。

楽譜は、曲を書いたら終わりではなく、美しく浄書していただいて何度も校正を重ね、今にも歌い出しそうな美しい譜面が出来上がるよう心血を注ぎます。作品の顔となる表紙が決まるまでにも、大変な時間と努力を要します。

絵が生きるかどうかはデザイナーさんの手腕に、その色味が出せるかどうか印刷屋さんにかかっていて……と、多くの方の力が結集してやっと1冊の本が出来上がります。

 

そして、この『ラプソディ第2番』は長年の感謝をこめて小原孝さんに捧げたものです。
詳しくはコンサートで述べていますが、小原さんからの言葉もとても嬉しいものでした。

 

 

本邦初演、小原孝さんによる『ラプソディ第2番』のソロバージョンの初演。
それはもう、作曲者としてとても嬉しい時間でした。
初演は、そのとき一度きり。
それを、今回は配信でもみなさんと同じように聴くことができるのは、私にとっても大きな喜びです。

 

 

そして、みなさんから「昨年の連弾の初演の思い出が蘇りました! ソロバージョンも素晴らしいです」「配信では小原さんの手元がアップになるので嬉しい」「音質がとてもいい」「楽譜が届いて嬉しい。私も練習します」と、沢山の声をいただいています。
8月6日に発売になったばかりです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

連弾&ソロ ラプソディ第2番 音楽之友社刊 定価: 1,980 円

 

9月25日(金)カワイ表参道で、『ラプソディ第2番』のレクチャーコンサートを開催することになりました。
新曲2番の連弾とソロだけではなく、『ラプソディ第1番』の演奏とレクチャーもいたします。
もちろん、小原孝さんをゲストにお送りします。

安全のため限定50席のみの募集ですが、後日配信も行いますので、遠方の方も当日はご都合が悪い方も、どうぞお聞きください。

 

 

楽しい時間はいつか終わってしまいますが、配信なのでまた、遊びにいらしてくださいね!

 

 

「私たちは会場で花になって、皆で聴いています!」と届けられた美しい花束を持って♡

 

 

最後に、お世話になったスタッフの皆さんとの記念撮影です。

前列左から、パーカッションをお願いした笠井亮さん、樹原涼子の編集を長く担当された亀田正俊さん(現在は音楽之友社の営業部長さん)、真ん中は現在の担当者である山本美由紀さん、右はクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん(ムジカノーヴァとピアノランドメイトの取材)。

後列左から、春日保人さん、カワイ表参道の甘利滋さん(リハーサルからずっとお世話になりました!当日は音響も)、調律の小野寺仁志さん、小原孝さん、樹原涼子、樹原孝之介、樹原涼子スタジオプロデューサーの木原遼元、スタッフ梶光代。

ヒダキトモコさん、音楽が聞こえてきそうな写真を、ありがとうございました♡

 

 

4台のカメラで神業のスイッチングをしながら中継してくださったのは、中部クリエイティブのみなさん!
裏方なのでと記念撮影は辞退されましたが、本当にありがとうございました。
今頃、8月30日からの編集後の配信準備のために、タイトルや字幕(一部のピアノランドには日本語と英語の歌詞がつきます)を入れていただいているところと思います。

生配信でも、画質と音が綺麗とお褒めくださった方多数でしたが、編集後はさらによくなるとのことで楽しみです。

それでは、来年のピアノランドフェスティバルでは、会場でお目にかかれることを夢見ています。
みなさま、本当にありがとうございました!!!  樹原涼子

 

 

 

ピアノランドフェスティバル動画配信は、9月30日までお申し込み受付中、
何度でも2つのコンサートをご覧いただけます。

8月29日まで 生配信後のアーカイブ映像をご覧になれます。

8月30日〜9月30日 編集後の、高画質高音質のピアノランドフェスティバルをご覧になれます。

🔶視聴料金(チケットは発券致しません)

一般:3,500円(税込)

ピアノランドメイト会員:3,000円(税込)
ピアノランドメイト会員の生徒さん:3,000円(税込)

 

🔶お申し込み方法

メールにて受け付け中

メールフォーム

https://ws.formzu.net/sfgen/S34941480/

 

 

 

💠樹原涼子のマスタークラスのご案内 DVD受講申し込み受付中

9月 倍音を掘り下げよう 『ムジカノーヴァ』誌上マスターコース連載中の8月号記事をテキストに

10月 左手の曲を弾こう その魅力に迫る

11月 「弾き語り」をしよう! ピアノの楽しさを広げる弾き語り

 

💠樹原涼子のコード塾 DVD受講申し込み受付中 

詳細はお問い合わせください。

 

💠ピアノランドマスターコース DVD受講 第3期 10月からスタート 9月から受付開始

詳細は9月に発表いたします。

 

 

 

樹原涼子
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