ピアノランドフェスティバル ピアノランド王国物語
8月2日のピアノランドフェスティバルが無事に終了して、なんだかまだ夢を見ているような気がします。それはきっと、これまでのピアノランドフェスティバルの中でもとびきり充実したコンサートとなったから!
19年めで、64公演めのピアノランドフェスティバル。
その全てに出演された小原孝さんですが、今回はもうゲストというよりホストになってくださって、一緒にゲストをお迎えしたようなフェスティバルとなりました。
プロのカメラマンの写真は、ムジカノーヴァ誌上や音友のwebでいずれご覧いただけますが、今日のところはスタッフが記録用に撮った写真でご報告します。
こちらは、プログラムの表紙。
第一部 「ピアノランド王国物語」
春日保人さん扮するピアノランド王国の王子は、夏休みの宿題を出すという魔法のランプから逃れて一人旅に出るも、ランプの大男が追いかけてきて……王子の運命やいかに!
次から次へと巻き起こるハラハラドキドキを「ピアノランド」の歌でオペラのようにドラマチックに歌い上げるその歌と演技に、会場は釘付けとなりました。
ピアノランドを書いたときから、1曲ごとに歌詞に込めた想い、メロディに込めたあの想いが蘇るような歌に、聴いていて私も心が熱くなりました。
なぜ、ピアノランドに歌詞が必要だったのか、ああ、今日、しっかりと伝わる!という喜びが私を包みました。
春日さんの歌で王宮やダンジョンが目の前にありありと出現する物凄いパワーと、朗読中も一瞬の隙もない春日さんの迫力に、会場から熱い拍手が惜しみなく贈られました。ほんっとにカッコよかったです!
朗読している私さえ、25分間もある物語とは思えないほどあっという間でした。
いつも演奏しているときはピアノは横向きですから見えないのですが、今回は春日さんが歌っている間にじっくり会場を観察することができて、子供達が口を開けて春日さんを見つめている姿が、本当にかわいかった!
歌の伴奏は基本的に「ピアノランド」の連弾のままなのですが、物語に合わせて左側に座った小原さんが音の厚みや奥行きを即興でつけてくださったり、ソロ曲の「森の夕暮れ」では孝之介がオブリガートをつけたりと、今回の秘められたテーマ、即興演奏への扉を開く隠し味もあちこちに。
元担当編集者の方からは脚本と演出を褒めていただきちょっと嬉しくなりました。
そして、アンケートには、「ピアノランド王国物語」の台本が欲しいという声もいくつかあって気を良くしています。
本当に、この台本が欲しい方はいらっしゃいますか?
今回初めて声楽家の演奏に触れた子供達も多いことでしょう。
オペラの主役をいくつも演じられていて、古楽の演奏活動もされている春日さんの本物の歌を子供達に聴かせたいという願いが叶いました。
これを機会に、ぜひ、保護者の皆様、声楽のコンサートやオペラにも足を運んでくださいね。
「樹原先生と小原くんの爆笑レッスン」
こちらは毎年台本なしで、テーマと曲だけは決めて、「樹原先生」「小学校1年生の小原くん」のキャラクターに扮するだけで、どんどん即興的に話も演奏も進んでいく恒例のコーナーです。
何しろ、今年は登場シーンからインパクトが凄くて……小原くんたら、ピアノの下でカバさんみたいな豪快ないびきを……(汗)。
今年は『ムジカノーヴァ』5月号からスタートした即興演奏の原稿から「オノマトペ」を題材に、「様子を表す言葉を選んで音にする」レッスンをすることにしました。
各地の子供達の公開レッスンでは「ワクワク」「しとしと」「ザーザー」などが沢山飛び出しましたが、小原くんが思いついたのはなんと「ぐちゃぐちゃ」……それが音楽になると……!?
このコーナーは絶対にやめないでと多くの子供達先生方からの嘆願があり、1回も欠かすことなく永遠につづいております(笑)が、今年の小原くんの即興演奏は、聴き惚れるほど美しいものでした。
「ピアニスト体操 英語でピアノランド」
ここからは、NHKの「えいごであそぼ」の4代目の歌のお姉さん、声優、歌手のクリステル・チアリさんをお招きして、すでにyoutubeにアップしてある4曲を次々に英語で教えていただきました。
クリステルさんは、関西弁と英語でノリノリ!
みんな、魔法にかかったようにすぐに英語で歌ってしまうので凄いな〜、さすがクリステルさん。
あっという間に会場の子供達、親御さんのハートをつかんで、「どどどど どーなつ」「ぴかぴかぼし」「ぐーぱーたいそう」「きつねとうさぎ」を英語で大合唱しました。
すでに日本語で歌い、慣れ親しんでいる体操だから、耳のいい子供達はスッと真似ができてしまう。
これも、二段階導入法ですね!
小学校でも英語の授業が始まりましたが、このように、ピアノのレッスンの時間に楽しく、自然に英語に親しめるというのは素晴らしいことですね。
広がっていくといいな~、英語でピアノランド♪
本番の写真はあとでいただいたら追加するとして、この4曲の動画をご紹介します。
「どどどど どーなつ」と「ぐーぱーたいそう」の動画は、ゆっくり発音バージョンと、すいすい歌うバージョンの2つをこちらにまとめてくださっています。
おいでになれた方は復習を、初めての方は繰り返しご覧くださいね!
「小原孝ソロコーナー ピアノ名曲フォーユー~日本を奏でる~」
ここでは、日本の名曲をたくさんご紹介くださいました。
そして、小原さん作曲のNHKみんなの歌「私はブランコ」を会場のみなさんと大合唱♪
小原さんはピアニストですが、「小原孝」というジャンルのピアニストでいらっしゃる。
カバーされるジャンルの広さは日本一! どんな音楽の魅力も余すところなく伝えられるハートと技量とキャパシティで、“音楽の素晴らしさを伝える”という音楽家の究極の目的をいつも体現されていると思います。
ピアノランドフェスティバルでのソロコーナーではその年ごとにいろいろな「小原孝」を見せてくださるので、毎年楽しみなコーナーです。
第二部 「リトル作曲家、リトルピアニスト登場!」
録音応募プロジェクトの告知は冬でしたから、半年以上かけてこのステージを迎えたことになります。
数百件の録音応募(作曲部門・連弾部門)にコメントを書き送り、その中で選ばれた子供達の公開レッスンを「未来に手渡す音楽の贈り物ツアー」と題して大阪、福岡、名古屋、汐留、表参道の5ヶ所で行い、その中から選んだのは3人。
録音を送ってくれた子供達も、何回も気に入ったテイクが録れるまで一生懸命演奏したことでしょう。
公開レッスンに出演したみんなはとても頑張ったし、とても上手でした。
だから、ピアノランドフェスティバルのステージには、表現意欲にあふれた作品と演奏を選びました。
そして、子供達は見事にその期待に応えて、力を出し切ってくれました。
(この審査と贈り物ツアーの間に深く考えたことは「怒涛の3ヶ月を振り返って 感謝・原点・集合知・未来・感謝」というタイトルで日記を書いたので、よかったらご覧ください)
秋には、みんなの演奏をピアノランドwebにアップしますので、お楽しみに!
1 本田結梨奈 (小3) はじめまして 東京会場 表参道より (神奈川)
結梨奈さんはヘッドセットマイクを装着、友達と出会えた喜びに満ちた「はじめまして」を自分で考えた振り付けで踊りながら歌って披露。作詞、作曲だけではなく振り付け付きというのも新鮮でしたし、思いがストレートに伝わる元気一杯のパフォーマンスに、会場も笑顔いっぱいになりました。
2 賀集 龍平 (小4) 草原のたたかい (PL④) 名古屋会場より (札幌)
龍平くんは、ピアノを弾くことがたまらなく好きなことが、演奏のすべてから伝わってくる熱演。小原孝さんのセコンドに食らいついていくような集中力で、曲のメッセージを会場に伝えました。こんなにも音楽をピアノを愛していることが伝わる演奏は珍しいと思います。これからも頑張ってね!
頑張りました!
3 月俣 麻美 (小6) 風はどこから (こころの小箱) 福岡会場より (熊本)
『こころの小箱』の中の「風はどこから」の連弾。公開レッスンではプリモもセコンドも練習していて、特にセコンドで作り出すポリリズムの波がよかったので、ステージでは特別に小原さんにプリモを演奏していただきました。プリモのメロディとの一体感、演奏への高い集中力で「風はどこから」を表現しました。
録音応募プロジェクトを受けた多くの子供達が会場に来ていましたが、彼らの演奏を聴くことはどんなに刺激になったことでしょう。みんなの代表としてここに立つのにふさわしい演奏だったと多くの方が認めてくれて、こんなに嬉しいことはありません。
私は、過去の素晴らしい音楽を引き続き大切にすることと同時に、次の世代の音楽を生み出していく人を育てていかなくてはならないと思っています。いろんなタイプの音楽家が育っていく土壌を作るところから、耕していきたいという私の夢が、少しずつ形になってきたように思います。ご一緒に夢を育んでくださる先生方、楽器店の皆さま、本当にありがとうございます!
バリトンで聴く 「ピアソラ」と「樹原涼子」
春日保人さんが、ピアソラが貧しい花売りの少年を描いた「バチンの少年」と私が彼のために書いた「僕の故郷」を熱唱。
ピアソラは小原さんの即興演奏とのやりとりが息を飲むほど美しくスリリングで、少年へのピアソラの想いが伝わってきましたし、「僕の故郷」では、阿蘇や天草の景色が目に浮かび、歌い手として歩いて行かれる道程が見えてくるような気がしました。
歌の力は、なんて凄いのでしょう!
子供達もずっと真剣に聴いているのが印象的で、音の尻尾が消えるまで、誰一人として拍手のフライングもなく、素晴らしい演奏を共に楽しむことができました。
この日歌っていただいたピアソラ作品の他に、春日さんがご自身のルーツを辿るように大切に選曲してレコーディングしたCD「ROOTS」は私の愛聴盤です。みなさんもぜひ、お聴きくださいね。
新刊 連弾組曲集『時の旅』より初演
今年の私の新刊です。 表紙は遠藤湖舟さんの写真をいただき、素敵な表紙が出来上がりました。 ピアノランドフェスティバル会場での先行発売がギリギリ間に合い、本当によかったです。
連弾組曲「小さな時間旅行」“A little time trip”suite for four hands
Ⅰ ドリアンボートに乗って On a Dorian boat
Ⅱ フリジアンの罠 Phrygian trap
Ⅲ リディアンドールの家 A house of Lydian doll
Ⅳ ミクソリディアンの活躍 Mixolydian’s success
子供達に教会旋法・モードを覚えてもらえるようにと、モード名をタイトルにしたお話組曲を書きました。プリモは子供にも弾けるように書きましたが、内容はお子様向きというよりも本格的な楽曲です。
楽譜に載せた「物語」を私が朗読しながら、小原さんとの連弾で聴いていただきました。会場中が耳になったようで、とても嬉しい初演となり、小原さん、編集者さん、スタッフ、会場のお客様に心から感謝いたします!
主人公の女の子とリディアンドール、やせっぽちの熊のミクソリディアンとの交流を、不思議な時間旅行の中で描いた作品です。みなさんもレッスンで、発表会で活用してくださったら嬉しいです。イラストは、おなじみの本間ちひろさん。
「フリジアンの罠」には即興演奏をしてもよい場面があり、きっとピアノランド育ちの子供達なら即興演奏ができるのではと、それも楽しみです。
連弾組曲「美しい時間」 “A beautiful moment”suite for four hands
こちらは、人生の様々な時間を彩る“時”をテーマにした大人のための5作品から、★を演奏しました。
Ⅰ ゆらぎ Fluctuation
Ⅱ 青空の下で Under the blue sky
Ⅲ 星の時間 Time of the stars ★
Ⅳ 楽興の時 Moment musical ★
Ⅴ 母の胸に On my mother’s chest
~左手と左手のために~ a piece for two left hands
「星の時間」はアイオニアンモードで限りなく美しい星の世界を、「楽興の時」は演奏しながらの演技の場面もありで、小原さんとのパフォーマンスをお楽しみいただきました!
この楽譜は、なんとフェスティバルの前日に届くという、まだ湯気が出ているくらいな出来立てでしたので、まだ一般の店頭には並んでいませんが、予約は可能です。ぜひぜひ、早めにお手にとっていただきたく、ピアノ連弾の喜びをもっと多くの方に味わっていただけたら幸いです。
10月10日にはこの曲集の発売記念セミナーを、来年は、小原孝さんとの演奏会を予定しています。全曲演奏をどうぞ楽しみにお待ちください!
「花」 歌 樹原涼子&春日保人/ピアノ 小原孝
ゲーム「俺の屍を越えてゆけ」の主題歌、樹原涼子のCDと楽譜『The Four Seasons ベスト・セレクション』(CDでは〈spring〉に収録)でも親しまれている「花」を、初めてデュエットで、しかも、春日保人さんと歌うために編曲しました。
小原さんの伴奏は繊細かつゴージャスの極み。
春日さんの揺るぎなく情熱的な声と私の声が重なって、本当に素晴らしい境地へと導かれていくようでした。
この曲は、芸術劇場第大ホールやミューザ川崎でオーケストラと共演していますが、その時の迫力に勝るとも劣らない、記念すべき演奏になったように思います。
「ピアノランドフェスティバルでは、樹原涼子の歌も絶対に聴きたい!」と言い続けてくださる方のリクエストにお応えしたつもりでしたが、自分の中の新しい扉も開いたような気がします。春日さん、小原さん、ありがとうございました。
合唱 熊本復興支援ソング「虹-七色の音-」
日本中が地震や大雨による被害で傷ついている今、参加者を募り、どうしてもこの曲の合唱をしたいと思いました。
作詞 関谷祐人 浦川光一/作曲 樹原孝之介 (くりーむぱんだ)
指揮 春日保人/ピアノ 樹原孝之介
合唱 ピアノランドフェスティバル有志合唱団
くりーむぱんだ 小原孝 クリステル・チアリ 樹原涼子
ステージ上で歌いながら、皆が感動に震えました。
会場の皆様からは、自然と涙が溢れてきたと、それまでのコンサートの感動がここでピークになったと感想をいただきました。ピアノランドメイト会員のみなさん、そのご家族など、各地からそれぞれに練習をして集まっていただき、本番一度きりの有志合唱団の演奏でした。
育てなくては育たないものもありますが、勝手に育っていくもの、自ら育つ生命を持った作品というものもあるように思います。それが、この曲「虹」です。
“HARA HARA 倶楽部”の復興支援ライブでバンド「くりーむぱんだ」が「虹」を歌い、熊本に寄付をするために多くのアーティストと一緒にCDを作り、雑誌『教育音楽』中学高校版に楽譜が掲載され、さらに選ばれて今年合唱曲集『エスペランサ』に収録されてお手本盤CD付きで音楽之友社より発売、毎日新聞の記事ともなり、この度オンデマンドのピースが出版され、こうして皆さんで合唱する運びとなりました。この経緯は、日記合唱って、なんて素晴らしい!にも詳しく書きましたのでよかったらお読みください。
多くの皆様に歌っていただき、日本中に「虹」の架け橋ができたら嬉しいです。
こうして、様々なコーナーで盛りだくさんのピアノランドフェスティバルは、休憩を入れて約2時間半のステージを終えました。出演者の皆様、協力してくれた多くのスタッフの皆様、音楽之友社、かけはし文化振興財団、楽器店、問屋さん、ピアノの先生方、本当にありがとうございました。子供達にとってこのコンサートが心に残るものとなれば本当に嬉しいです。
出演者が勢ぞろい。
出演者と、ボランティアスタッフの皆様と記念にパチリ。
新刊担当の山本さんと♪ これまで担当していただいた亀田さんと♪
クリステルさん&本間ちひろさん♪ くりーむぱんだもサイン会♪
子供だった教え子がママになっていてびっくり!
フェスティバルの打ち合わせを5月17日、「《樹原涼子》を弾きたいシリーズ トーク&コンサート第3回小原孝」の後にしたのでした。準備期間は本当に大変でしたが、今はもう懐かしい。
一番左が、写真家の遠藤湖舟さん。『時の旅』の表紙をありがとうございました!
2018年8月2日(木)渋谷のさくらホールは、とても幸せな音楽で満たされました。
おいでくださった皆様、また、来年もお逢いできますように!