
第11回 2本指で美しいレガート&スタッカート&ノンレガート
こんにちは!
海外からご覧になっている方から嬉しいメールをいただき、「おお!そういえば、世界中どこに居ても見ることができるんだわ!」と改めて驚いたりしています(インターネットですものね!笑)。
いかに演奏すればもっと美しくなるのか、“基本”を知りたいという方がいらっしゃるのは嬉しいことです。
「なぜそうするのか?」納得できて初めて、次からも応用できる基礎力となる。
なんとなく曲を沢山弾いただけでは、身につかないこともあります。
この連載が、そんなことに気づく、何かのきっかけになれば幸いです。
第9回は黒鍵の和音から導入することで、ピアノを弾く“自然な腕の構え”を学び、第10回では両手の1の指だけで「ドをいかに感じて弾くか」を学びました。
今回は1&2の指を使って、様々なアーティキュレーションの基礎を学びます。
(アーティキュレーション:アクセント、テヌート、スラー、スタッカート等、個々の音に様々な表情をつけることを言います)
音数が少ないこの時期を大切に教えて、耳とタッチを磨き上げていきましょう!
ピアノランドメソッドは、演奏に入ってからも無理なく上達するよう、3ステップで構成されています。
ステップ1 テクニック教材 『プレ・ピアノランド』3巻 欲しい音のための具体的奏法を学ぶ
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ステップ2 曲集教材で実践 『ピアノランド』1巻 音楽のためにテクニックを使う
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ステップ3 併用曲で応用 『ピアノランドコンサート』上巻 ステージでの演奏レベルを目指す
上記に沿った目次です。
●ロングトーンとノンレガートで、「ゆかいなロックンロール」を伴奏する!
●1の指、2の指で作る「スタッカートとレガート」
1と2の指を使い、「シドレ」の3音をを演奏します。
『プレ・ピアノランド』レッスン5でとなりあった指を入れ替えての美しいレガートを、レッスン6ではスタッカートを雨粒に見立てて、しっとりしたハンドタッチのスタッカートを学びます。
〈レガート〉は、イタリア語で「結ばれていること」ですから、音と音の間に隙間ができないように、一音の重みを隣りの音に流し込んでいくようなイメージで演奏します。
そのために、“二段階導入法”で歌ったり、聴きわけたり、指の独立を図ったり(指のダンス)様々な準備をしてきましたが、ピアノを弾き始めてからもレッスン5では毎曲のように「タッチポイントで、指先がつぶれないで、歌うようなレガートで、きれいな音で、伴奏をよく聴きながら…」と自分自身へのチェック項目が盛沢山。
先生に言われて正しく弾いたら◯というのではなく、自分で美しい響きを求められるように、そのためには何が必要か、自分の頭で考えさせる流れを大切にしています。
〈スタッカート〉には、芯のある丸い音、短く鋭い音、軽くパラパラした音等、多くの種類、奏法がありますが、ここでは幼児の手に負担をかけない、すっと下ろした手を、手首から持ち上げるようにして生まれる自然なスタッカート(鋭く、大きくなりすぎない)から学びます。
これなら、手のフォームも崩れず、音も割れず、美しい響きを一音ずつ確かめながら演奏できます。
さぁ、レガートとスタッカートをマスターしたら、1曲の中でスタッカートとレガートを弾き分ける「あまやどり」です。
初めの2小節は雨に降られて、後半2小節は雨宿りしているように演奏しましょう。
『プレ・ピアノランド』3巻より「あまやどり」
タイミングだけではなく、音の質感や音のしっぽの形(余韻)、表情にも気を配りましょう。
●ロングトーンとノンレガートで、「ゆかいな ロックンロール」を伴奏する!
「 いろいろなジャンルの音楽の楽しさを教えたい!」とピアノランドはノンジャンルにピアノが弾けることを目指していますが、「初歩でもロックンロールを、そしてブルース進行を経験させておきたい!」と欲張って作った曲です。
右手2本指でも、これなら発表会もOKです! 先生もノリノリで伴奏してください♪
『プレ・ピアノランド』3巻より「ゆかいな ロックンロール」
プリモは、1の指で手のフォームを支えているので、2の指のフィンガータッチでのノンレガートが安定します。セコンドのハーモニー、ミュージックデータのドラムやベースを聴きながら、タイトに演奏できるといいですね!
上手くいったら、左手のための「それいけロックンロール!」もつづけて演奏してください。
●歌って弾こう!「たぬきのたいこ」
そして、『ピアノランド』にも、2本指の曲が4曲。その中から、人気の「たぬきのたいこ」です。
ピアノランドの特徴でもありますが、初歩の曲はパーカッシブな要素が多く、この曲も同音での手の入れ替えがつづくので、子ども達は全身でウキウキと音楽を受け止めます。このため、テンポ感、リズム感が早くから育ちます。
また、となりあった音は自然とフィンガータッチでレガートに演奏できるので、生き生きとしたアーティキュレーションが生まれます。
セコンドはベースラインの8分音符の刻みを軽めに、右手の裏拍はハーモニーを感じて演奏します。
『ピアノランド』1巻より「たぬきのたいこ」
プリモの両側にセコンドパートがまたがっている曲は、次の方法で伴奏することができます。
★幼児との連弾では、セコンドは左に座り、子どもの後ろから右手を回すようにして演奏する。
★大きい子、大人との連弾では、プリモの手の上から、動画のように演奏する。
★セコンドの右手パートを別の人が担当、3人で6手(5手)連弾として楽しむ。
私は、我が子を膝に抱いて両手を広げ、一緒に歌いながら演奏していました。
生き生きとしたアーティキュレーションのためにも、ぜひ、歌いながら演奏してください。
●発表会では「ロマンティックなワルツ」を♪
さぁ、『ピアノランドコンサート』上巻で、ステキにコンサートタイムです♪
両手の1、2の指に加えて右手だけ3の指も使い、4小節間のレガートでのフレーズを一息に歌うように演奏します。
この曲では、レガートでの左右の受け渡し、ワルツの拍子感を育てる、和声変化に伴う表現力アップ、リピート時にセコンドの厚みが増すことを感じて歌い込んでいく等、セコンドと音楽上のコミュニケーションも学びます。
また、後半のサビで、特別にオクターブ高い「ド」を使うところで、跳躍進行の盛り上がりも初体験。
この曲が弾けたときの子ども達や親御さんの嬉しそうな表情を見ると、いつも「作曲してよかった!教えていてよかった!」と思います。
『ピアノランドコンサート』上巻より「ロマンティックなワルツ」
(同じ楽譜に、イ短調、プリモとセコンドがポリフォニックに動く「メランコリックなワルツ」が収録されており、本作と対のようになっています。「初歩であっても音楽的には子ども扱いしない」ことをモットーに、どんどん感性を刺激しつづけていきます。4の指まで使えるようになったら、演奏してみましょう)
このように、ミドルCから両側に音が1つずつ増えていくことで、音楽の世界が広がっていく喜びを感じさせてください。
連弾曲のセコンドは、もちろん初見ではなく予め練習をして、子どもの演奏を聴く余裕を持って弾いてください。
この連載の感想をお寄せいただければ幸いです。感想はこちらへ。
次回も、どうぞお楽しみに!
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