第18回 半音階、スケール、左右の音量コントロール
ピアノが上手になりたい人にとって、「弾く」ことよりも大切なのが、脳の使い方を意識すること!
先日、脳神経内科医でありピアニストの上杉春雄さんをお招きしたセミナー「上杉春雄さんと”美”を探る!」の中でも、このことは何度も強調されていました。
『ピアノランドたのしいテクニック』は、ただ指を動かすのではなく、音楽的に演奏するためにはどのようなテクニックが必要か、そのためにはどのような練習が有効で、どのように取り組めば効果が上がるのかを丁寧に掘り下げたテキストです。
短い曲中で目的を意識してピンポイントに学ぶので、実際の曲への応用力をつけることができます。
今回は、多くの曲の中で必要とされる、半音階、スケール、左右の音量やアーティキュレーションのコントロールについてまとめました。
動画も参考に楽しんでいただければ幸いです!
『ピアノランド』3巻からは、人気の王宮シリーズ、4手と6手連弾の2曲をお楽しみください♪
目次です。
●半音階、なぜ、その指使いなの? 「おうきゅうのワルツ」
●左右の別々の音量、アーティキュレーションで弾くための練習
●スケールは、様々な拍子感の中で練習しよう! 「王宮の音楽」(6手連弾)
●半音階、なぜ、その指使いなの?
臨時記号が沢山つくので、子ども達はちょっと難しく感じてしまう半音階ですが、こんな取り組み方もあります!
いきなり半音階を何オクターブも弾くのではなく、ポジション移動(指をくぐらせたりかぶせたりしない)なしの練習曲「かがみのめいろ」で、半音階に親しむのです。
半音階上に5指をすぼめるように順番に並べて、ほんの少し手首の回転運動を利用して重さをかけながら、ちょっと不気味な表情を出して「かがみのめいろ」を演奏してみましょう!(連載第16回「かざぐるま」のタッチを参考に)
右手123454321、左手543212345という簡単な指使いですから、音色や表情に集中できます。
「かがみのめいろ」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より レッスン14 半音階
プリモの半音階に、セコンドが3度上でハモるだけで、なかなか不気味な曲になりましたね!
子どもたちには、指を動かすことが音楽なのだと思わせないように、音楽で心を動かす体験を積んでもらいたいと思います。
それではいよいよ、半音階の上行下行の指使いを学びましょう!
「まず、白鍵は1の指、黒鍵は3の指で弾いてみましょう。ドから始めてね」
「はい! ドード♯ーレーレ♯ーミー、あれ、先生、次は黒鍵がないけど、3の指で弾いていいですか?」
「3の指は長いから、奥の方にある黒鍵のためにとっておいてね!」
「ということは、白鍵が続くところは2の指で弾けばいいのですか?」
「そうそう! そうしたら、ずーっと半音階が弾けるのよ」
「本当だ!1の指が短くてよかった(笑)」
という訳で、必然的に半音階の指使いの仕組みを学び取れるように促します。
書いてある指で弾くのだと教えるのではなく、なぜそのようにするのか、指使いの原理原則を発見させるのです。
これで子ども達は、一生、半音階の指使いを忘れることはありません。
(12の指で半音階をスタートする場合も、白鍵がつづくところだけ123となるのは同じです)
それでは、指使いをマスターしたところで、今度は半音階を楽しく連弾しましょう!
先程とは打って変わって、ウキウキするような伴奏にのって「しょうがいぶつきょうそう」です。
「しょうがいぶつきょうそう」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
では、曲中でさり気なく半音階を使った「おうきゅうのワルツ」をどうぞ♪
『ピアノランド』3巻より「おうきゅうのワルツ」
「おうきゅうのワルツ」『ピアノランド』3巻より
●左右の別々の音量、アーティキュレーションで弾くための練習
レッスン15「ユニゾンとハーモニー」では、左右の手でオクターブユニゾンのメロディを演奏します。
左右の音量を変え、左右のアーティキュレーションを変え、音楽的な変化を楽しめるようになるためには、脳の働きを駆使する習慣をつけることが何より大切です。
上手くいかないとき、「脳からの指令をもっと緻密に出そう。どのような指令が必要なのだろう?」と思ってください。
例えば、テンポが速過ぎてコントロールできない、フォームに問題がある、脱力できていない等、問題点を整理しましょう。
自分を下手だとか不器用だとか決めつけると、脳が「自分にはできない」と認識して上達を妨げます。
どんな仕事でも、「できない」と言う前に、「どうしたらできるのかな?」と考えるだけで、上手くいく方向性を見出だすことができるのです。
自分の脳から自分の手や指に明確に指令を出し、コントロールが行き届いているかをよく聴いて確かめながら、じっくりと練習しましょう。
何事も、時間をかけてよいのです。
左右別のことをするのが苦手な人は、動画を参考に!
『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より レッスン15 ユニゾンとハーモニー
「ふたごのメロディー」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
●スケールは、様々な拍子感の中で練習しよう!
従来のスケール練習は4拍子が多く、ハーモニーやリズムが存在しない指練習では、どうしても無機的なものになりがちでした。
ですが、楽曲の中に出てくるスケールを美しく演奏するためには、様々な拍子やハーモニー、リズムの組み合わせを楽しむ経験が必要です。
ここでは、6/8、4/4、3/4の拍子感を感じ分けながら(強拍にくる指が毎回同じにならないことも大切!)、伴奏のハーモニーを聴いて、上行下行の流れを楽しみながら演奏します。
けして、指を垂直に打ち込むような固いタッチにならないこと、楽曲の一部としてスケールを楽しむことを教えてください。
指をかぶせたりくぐらせたりするテクニックについては、第15回「3つのポジション移動」の中で扱っています。
2345の指のつけねを高い位置にキープして、1の指をくぐらせる空間を手の内側に充分確保、1の指の打鍵時に手首が下がらないように注意して演奏します。
曲のタイトル、拍子を意識して、美しいレガートで共演してください。
「そよかぜ」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
「はるのたてごと」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
「のんびりあるこう」『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より
『ピアノランドたのしいテクニック』中巻より レッスン20 スケール(音階)
動画の他にも、テキストには一方の手が裏拍で追いかけていく「おにごっこ」や、「光と影」など、スケールを正確に美しく演奏するための練習方法が書かれています。
それでは、スケールをメインにした6手連弾「王宮の音楽」をご覧ください。
ミュージックデータと一緒に、オーケストラとの共演も楽しみながら、発表会やコンサートで演奏していただけたら幸いです。
「王宮の音楽」(6手連弾)『ピアノランド』3巻より
音楽の中の様々な要素を、「ピアノ」という楽器ではどのように学んでいったらよいのか、という視点で連載をつづけています。
次回からは、いよいよ『ピアノランド』4巻、『ピアノランドたのしいテクニック』下巻へ進みます。
そろそろ、バッハの小品やブルクミュラー等の作品が併用できるレベルとなり、益々楽しくなって来た頃です。
近現代までのハーモニーを把握できるよう、『耳を開く 聴きとり術 コード編』を併用して、和声感覚を伸ばしていくことをおススメします!
さらに、ピアノランドのミュージックデータをダウンロードして、iPhoneやiPadで使えるようになりましたので、音楽之友社のウェブサイト「オントモヴィレッジ」の「ピアノランドの広場」もご覧ください。
11月30日、2016年1月13日には、「ピアノランドのミュージックデータを使って、ピアノランドの世界をもっと広げるセミナー」と題して、懇切丁寧なセミナーが開催されます。
これまでの動画をご覧になりたい方は、YouTubeピアノランドチャンネルをご覧ください♪
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