第2回 “ニ段階導入法”
連載第2回目も、ご覧いただきありがとうございます!
本当に、連載が始まってしまいました!
始めておいて何を言う!…ですが、本当に大変なことに取り組み始めたなと、ひしひしと感じています。
前回、みなさまから公式Facebookページにとても沢山の「いいね!」をいただきましたが…
レイアウトを途中で書き変えたらこのページの表示が0に戻ってしまったり…で、まだまだWebでの連載は慣れないことが多いのですが、コツコツとつづけて参ります。
どうぞよろしくお願いいたします!
さて、今日の本題です! 見出しをご覧ください。
●本当に「上達させたい」と思うなら
ピアノランドマスターコースやピアノランド勉強会の卒業生のみなさんが口を揃えて仰るのは、「“ニ段階導入法”のよさは、聞いただけではわからない、自分が教えて体験してみて初めてその凄さがわかる」 ということ。
実は、今回から『プレ・ピアノランド①』の教え方に入ろうと思ったのですが、何人もの方から、「なぜピアノを弾かせる前の“第一段階”が大切かが理解できないと、中途半端になってしまうのでは」との声をいただきました。
そこで、講義の中でとても大切にしている「なぜ“二段階導入法”がよいのか、なぜプレ・ピアノランドが必要か」というところを、クローズアップして書くことにしました。
〈卒業生の声 抜粋〉
「受講するまでは、ピアノを弾かせる前に、プレピを2冊!そんなに何ヶ月も教えることがあるとは思いませんでしたが、やってみたら、準備なしでピアノを弾かせていたことが恐ろしくなりました」
「ピアノの先生なのに、ピアノを弾かせないで教える期間があることに迷いがありましたが、“二段階導入法”で教えた子とそうでない子の差が大きすぎて衝撃をうけました。昔の生徒に申し訳ない気持ちです。今では絶対にプレピからスタートすることにしています」
「姉妹で、下の子だけプレピを使ったら、妹の方が譜読みも早く音色もきれいで、姉にもプレピを抜粋して教えているところです」
「すぐにピアノに入らなければとプレッシャーに感じていたけれど、親御さんはすんなり理解してくれてほっとしました」
まず、いきなり『ピアノランド①』からピアノを弾かせたくなってしまう人も多いと思いますが、ちょっとお待ちくださいね!
思い出してください。連載第1回の、【はじめからよい音で】【二段階導入法】 の項目を。
また、冷静に考えてみましょう! 大人のサイズに合わせて作られたピアノという楽器を、いきなり幼児に弾かせて大丈夫でしょうか?
ヴァイオリンのように、ピアノにも体格に合ったサイズの楽器があればよいですが…。
幼児にとってはサイズが大きく、鍵盤は重いですから、ふにゃふにゃの指で弾き始めるとどうなるか、容易に想像ができます。
●「ピアノを弾く過程の分解図」からわかること
ピアノを弾き始めるための準備をしてから始めた方が、悪い癖を付けることなく、本人が苦労せずに上達できるのです。
下記は、『プレ・ピアノランド』のために樹原涼子が考案した「ピアノを弾く過程の分解図」です。
ピアノを演奏するよりも前に、〈聴く〉違いを聴きわける耳を育て、〈歌う〉音楽的表現力を養い、〈動く〉正しい身体の使い方を覚え、〈見る〉楽譜が読めるように育てる大切さと必要性がおわかりいただけます。
ピアノを弾くということは、上の1から4までの流れを連続的に行なうことですが、一見この流れに沿っているようであっても、各項目の達成レベルによって大きな差が出ます。順を追って説明いたします。
第一段階でのピアノを弾く準備をしなかった場合A. と、第一段階でピアノを弾く準備を終えてから演奏した場合B.の違いを、図を見ながらお読みください。
A. 準備なしにピアノを弾かせた場合に起こりうる事柄
1 楽譜のしくみがわからないうちに演奏させると、視覚的な情報を読み取れず、聴き覚えで弾き始める
2 楽譜の内容の理解と身体への命令系統が整っておらず、行き当たりばったり、さぐり弾き、つっかえ弾きになりやすい
3 指の筋力が弱く指先がつぶれやすい、各指が独立していない、力が入って乱暴な音になりやすい、ミスタッチが多い
4 自分の出した音を聴く余裕がなく、テンポもリズムもコントロールできないため、連弾の伴奏をすると嫌がる
B. “ニ段階導入法”で〈聴く〉〈歌う〉〈動く〉〈見る〉4つの柱に沿った60のメニューをマスターした場合
1 大譜表を見て、拍子、リズム、音高、音型、フレーズ等の情報を脳に伝達する
2 情報を理解して実際の音楽を思い浮かべ、実現のためにどの指にどのような動きをするか命令する
3 腕や手指が、命令に応じて正確に動くだけの筋力と緻密さを持ち、タッチポイントで鍵盤を操作する
4 実際に出た音が、イメージした通りに正確に演奏できたかどうかを耳で聴き、それに応じてその次の音の処理を判断しつつ、1に戻る
以上を延々と繰り返していくのが、演奏という行為です。
これから生まれる音楽を楽譜からイメージすることと、そのための緻密な指令を身体に出すことと、適切なタイミングで音を生み出すこと、その音をチェックすること。
その一連の流れを見渡し、イメージ通りに上手くいくようコントロールする訓練のことを、“練習”というのです。
子どもに演奏させるときに、Aで妥協することはありませんか?
はじめから、Bは無理だと決めつけていませんか?
それは、やり方によって、「誰にでもできること」に変えることができます。
失敗させる前に、はじめから美しい演奏を求める“ニ段階導入法”を始めてみませんか!
●脳にとってよいのは、どのような練習の方法だと思いますか?
Aの状態での演奏の場合、さぐり弾きやつっかえ弾き、汚い音色に無頓着になっていく…というのは、実は脳にとって大きなストレスになります。(弾く人だけではなく、聴く人にとっても…ですが)
弾けば弾く程イライラしてくる乱暴な弾き方をしている人は、まるで、美しさを求めることを知らないかのようです。
美しい一音を奏で、その音色に耳を傾け、様々なニュアンスの音を生み出す喜びを味わい、それを紡いでメロディにしていく、そしてハーモニーに…という体験をすれば、ピアノを弾く度に美しい音を奏で、自分が癒されていく、つまり、脳にも心にもよい状態ができていくのです。
どんなに小さな子どもでも、自分が癒されるような音楽を奏でることが可能です。
そういう方法で育っていけば、ピアノをやめたい、とは思わないのではないでしょうか。
ピアノのレッスンに対する考え方は人それぞれです。昔からの習慣も残っています。
この判断は、教える人、選ぶ人、双方が決めていくことです。
Aの風景は、絵としては可愛らしく、微笑ましいものかもしれません。
ずっと前のことですが、「バイエルをたどたどしく弾いているような音が、遠くから聞こえているような音楽、なるべく、間違えたり弾き直したりしていただけますか」と、何かの映像のシーンで頼まれたことがあり、上手くできず(つまり上手だったのですね…笑)困ったことを思い出しました。
しかし、Bを目指す先生方が多くなれば、確実にピアノ教育の世界は変わり、美しい音でしか演奏できない子が増えていくでしょう。
私は、ピアノの先生にも親御さんにも、“ニ段階導入法”というレッスン方法があることを知っていただき、ピアノを弾くための準備期間を有効に指導できる指導者が増えていくことを期待しています。
連載第2回目は、「ピアノを弾く過程の分解図」をご覧いただきながら、“二段階導入法”とは何か…について書きました。
次回からは、プレ・ピアノランドの内容を楽しく紹介していく予定です。
もし、動画で見たい体操メニューがあればリクエストしてください。チャレンジしてみます♪
どうぞお楽しみに!
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