勉強。それは、知りたいことを突き詰めていく面白さだ 4
ついつい連載となり、しかも4回目となってしまいました。
しかも、まだ、書きたいことの入り口にいるような気がしてきましたので、気が向いたらどんどんつづくかもしれません。笑。
前回、ホルショフスキーは“心のピッチ”でスケールを演奏している! ということに気づいた話をちょっと興奮気味に書きました。
あの美しいスケールの秘密の一端を理解できたと思った私は、ピアノランドメソッドの中にもその答えがあったことをみつけてとても嬉しく、スケール練習を楽曲以上の丁寧さで心を込めて練習するようになりました。
そして、嬉しいことにどんどん成果が上がりました!
もちろんホルショフスキーとまるで同じようになんていくわけがありません。
けれど、指導した人が次々に上達していくのに気を良くして、それらのことを次々にテキストに生かして出版していきました。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』や『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』には、そのプロセスで発見したことがたくさん詰まっています。
“心のピッチ”をマスターするための具体的な2つの方法
前回のお約束を果たさなくてはなりません。
具体的に“心のピッチ”をマスターする2つの方法について書きます。
その1 “心のピッチ”で歌う~弾く~へと感覚を広げる
みなさんには、ただ指を動かすのではなく、1音1音に心を動かしながら練習していただきたいと思います。
どんな風に、かと言いますと、下記のように“心のピッチ”でゆっくりと。
“心のピッチ”という言葉の意味を文章で説明するのは難しいですが、頑張ってみます。
例えば、劇のセリフの一部を意味もわからずただ音読するのと、役者さんが台本を読み込み、役になりきって演じることの違い、と言えばおわかりいただけるでしょう。
それは、同じ台詞であっても天と地ほど違うはずです。
みなさんも、ぜひ、“心のピッチ”でその音の高さになりきれるよう念じながら、スケールを心から歌ったり、弾いたりしてみてください。
念じる、と言うと何か奇跡が起こるみたいですが(笑)、そうではなくて、その音の高さをきちんとイメージして、それにふさわしい打鍵のスピードとタイミングで倍音を美しく響かせるよう細心の注意を払う、という意味です。
演奏する前に歌う練習は特に大切で、自分の心から欲した音の高さなのか、口先でその高さを歌っているだけのかも、すぐにわかります。
“心のピッチ”で歌えなければ、ピアノでそれを弾くことは難しいかもしれません。
まずはたったの1音を“心のピッチ”で歌うこと。
それに慣れてきたら、いつの間にか当たり前のことになってしまいます。
自分の声でできたことを、そのまま指から楽器に伝える。
「“心のピッチ”と言えるような音かどうか」は、自分でもすぐに聴き分けられるようになります。
そういうアンテナを持つことが大事なのです。
初めてレッスンをする人に対しては、“心のピッチ”で弾けているか弾けていないかを聴き分けて、指導の方法を変えます。
耳がよくなれば上達できるし、そうでなければできないので、響きの聴き分け方を教えるのです。
その2 “心のピッチ”をいかなる音程関係でも実現する
“心のピッチ”のコツがわかったとしましょう。
十分にふくよかで倍音を含んだ音程感のある単音が出せるようになって、めでたい限りです。
ですが、音楽は、同時に様々な要素が絡み合ってできています。
その複雑な要素を同時に満たせるようにしなくてはなりません。
焦らず進めていきましょう。
ここからが『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の出番です。
“心のピッチ”の1音をマスターしたら、その音でスケールを弾く。
これは、「“心のピッチ”で美しい音を響かせること」を連続した音で順番に行えばいいので、ポジション移動が上手くできれば実現できるはずです。
問題は次からです。
それをオクターブユニゾンでハモらせて演奏することです。
簡単そうでこれはとても難しいことです。
片手ならできるのに、両手ユニゾンになった途端に左右の手が寄り添っていないと言いますか、聴き合っていない、それぞれが勝手にスケールを弾いているような状態……。
これは、右手が左手を聴き、左手が右手を聴き、お互いがしていることを認知しあい聴き合うことでやっとバランスが取れた美しい響きが実現できます。
次には、反行するスケールを演奏してみましょう。
左右の手が反行して離れていくときの距離感、音程を感じながらその変化にワクワクしましょう。
折り返して反行するとき、近づいていくときの次の音への期待感や緊張感を自分が感じたり誰かに感じさせたりするときの新鮮な驚きを味わいましょう。
とにかく、左右の手が織りなす音と音との関係に一瞬も気を抜くことなく、一瞬ごとに新たな音程関係が紡がれていく美しさを、切れ目なく体現すること。
その充実感や満足感は、何ものにも代えがたいですね。
これが、ホルショフスキーがさらりとやっているスケール練習の極意ではないかと思うのです。
なんだか、急に難しくなったような気がしましたか?
でも、楽曲を演奏するというのは、これらの組み合わせなのです。
多分、子どもの頃「ハノン」で経験してきたスケールを、もう一度、全く別の角度から取り組んでみたいと思わなければ、永遠に気づかなかったかもしれないこと。
でも、気づいたら実現しなくては気が済まないし、自分一人ではなく、ひとりでも多くの人と実現したいと思ってしまいます。
音程感のある演奏
音程感のない演奏
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2018年 4月 4日(水)
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