舘野泉さん、80歳の誕生日に圧巻のコンチェルト4曲‼️
一昨日(11月10日)は、私にとって忘れられない日となりました。
午前中はマスターコース14期の卒業コンサート、午後は卒業パーティー。
夕方は来年のセミナーの打ち合せ。
そして、大急ぎでオペラシティコンサートホールへ!
そうです。舘野泉先生の傘寿記念のコンサートだったのです。
会場に到着すると、なんと、夫が取ってくれた席は中央やや上手よりの前から2番目ではありませんか。
こんな席でコンサートを聴くのはとても珍しいことで、しかも、この席からは演奏者の表情とペダリング、指揮者の足元、ヴァイオリンとヴィオラはもちろん、オーケストラのみなさんの表情、息づかいまでくっきり。ワクワク!
それにしても、4つのピアノコンチェルトを一夜に弾かれる、しかも、「80歳、最初の挑戦」とコンサートのプログラムの表紙にあるのを拝見して、これから起こる奇蹟的な場面にに立ち会えるという喜びに満たされました。
こちらが、その驚異的なプログラムです。
池辺晋一郎:ピアノ協奏曲第3番
「西風に寄せて~左手のために」(舘野泉に献呈)
ヒンデミット:管弦楽付きピアノ音楽 作品29 (左手のためのピアノ協奏曲)
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シュタール:オーケストラと左手のためのファンタスティック・ダンス
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
指揮:高関健
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
普通に考えればは、前半にソロを弾いて後半にコンチェルト1曲。
あるいは、頑張って前半と後半にコンチェルトを1曲ずつ。
ですが、80歳を迎えられる舘野先生が、休憩を挟むとはいえ、左手だけの超絶技巧の4曲のコンチェルトを4曲並べられるとは!
精神的、肉体的にも恐ろしい程のパワーが必要だと思いますが、「できるか、できないかは考えない。やリたいと思ったらもう駆け出している」と、ご著書『命の響』(集英社)にも書いていらっしゃる通り、どうしても実現されたかったことなのでしょう。
それはもう、夢のような演奏会でした。
舘野泉というピアニストの磨き抜かれた美しくもあたたかい音が、目の前のスタインウェイから発して私の耳に届く。
オーケストラは、ピアニストの類い稀なるドライブ感に巻き込まれて、どんどん熱く、情熱の塊となっていく。
何か、音楽の原石に触れ、根源的なものに触れたような時間。
作曲家が書きたかったこととピアニストが弾きたかったことが合体してほとばしるような演奏。
どの瞬間もスリリングで魅力的で、現代音楽であるにも関らず会場の空気がずっと集中しつづけ、ワクワクと波打っているのがわかる。
舘野先生が心から楽しまれていることがどの瞬間も伝わってくるから、どんなシビアなハーモニーもどのように動いていくのか、次々に変わっていく拍子やリズムの複雑な構成も、まるでオーロラを見ているような気分で聴衆の耳がついていく。
素晴らしいとしか言いようがない、本当に本当に素晴らしい演奏会だった!
後半からは、天皇皇后両陛下もご臨席になり、会場の空気もさらに盛り上がっていきます。
ラヴェルのコンチェルトはもう圧巻で、明日ピアノが弾けなくなったらどうしようというくらい拍手をしてしまったし、アンコールの「赤とんぼ」の梶谷修さんの編曲の素晴らしさにも演奏の素晴らしさにも脱帽。
舘野先生以外に、誰がこんな風に演奏できるだろう!
音楽の力に圧倒されたのは、本当に久しぶりのこと。
この感激を、家族と、そして信頼する編集者の方々と会場で分かち合えたことはこの上ない喜びです。
1曲目を作曲された池辺晋一郎先生が終演後の“お誕生日パーティー”でお祝いの言葉で「舘野先生には左手が何本もあるんじゃないか!」と仰っていましたが、本当にその通りでした!
舘野先生にお祝いを申し上げ、今回舘野泉左手のための小曲集「母に捧げる子守唄」の楽譜に取り上げていただいた私の「ふたり」「想い出の小箱」につづいて、必ず、先生のために作曲させていただくことをお約束しました。
演奏を終えて、バースデイパーティーで満面の笑みの舘野先生と。
舘野先生の右側は舘野先生の左手の小品集と『ピアノランドコンサート』を担当している中澤慶さん、舘野先生、樹原涼子を長く担当されている亀田正俊さん。私の左は次男樹原孝之介。
こうして、私のピアノ曲集『こころの小箱』『やさしいまなざし』からそれぞれ左手の曲を見出だしてくださったことをご縁に、夢のような素晴らしい経験ができたことがとても嬉しく、これからもコツコツと作曲していこうと改めて心に誓いました。
(舘野泉左手の小品集「母に捧げる子守唄」にまつわることは、10月19日の日記に詳しく書いています)
マスターコースで2年間受講したみなさんとの充実した卒業コンサートと舘野泉傘寿記念コンサート。
11月10日の幸せを忘れないで生きていこうと思います。