舘野泉「左手のためのピアノ小品集」に、樹原作品が2曲♪♪ 

舘野泉「左手のためのピアノ小品集」に、樹原作品が2曲♪♪ 

音楽之友社から「舘野泉先生の新しい曲集に樹原先生の曲を2曲入れさせていただきたいと、ご希望をいただいたのですが……」と連絡をいただいたときは、とても嬉しくて飛び上がりました!

舘野泉先生と言えば若い頃から仰ぎ見るように尊敬してきた大ピアニストでいらして、何回も遠くから1ファンとして拝聴させていただいてきたわけで、私の作品を取り上げていただけるのは、本当に至極光栄なことであります。(あ、固くなってる……)

もちろん、一も二もなく「喜んで!」とお答えしたのですが、やはり、楽譜が送られてくるまでは何か落ち着かないものがありました。

 

タイトルは、左手のためのピアノ小品集「母に捧げる子守唄」舘野泉監修

ジャーン!

 

舘野泉 左手のためのピアノ小品集「母に捧げる子守唄」

 

 

送られてきた楽譜の表紙は上品で美しく、扉を開くと10曲の目次。

 

 

左手のためのピアノ小品集 目次

 

 

選んでいただいた樹原涼子のピアノ曲集。

『こころの小箱』より「想い出の小箱」、『やさしいまなざし』より「ふたり」。

 

kokoronokobako   yasashiimanazashi-l

 

 

 

舘野先生が時間をかけて選び抜かれた曲ばかりと伺って、気持ちが引き締まります。

錚々たる顔ぶれの中に入れていただき、とても嬉しく、モーツァルトの名曲の次なのだわ!といらぬ緊張をしたり。

アヴェ・ヴェルム・コルブス(宮下秀樹編曲)の次に、『やさしいまなざし』から「ふたり」、つづいて『こころの小箱』から「想い出の小箱」、そして、タイトル曲の「母に捧げる子守唄」(塚本一実作曲)とつづきます。

あたたかな、母や故郷への郷愁を感じさせるような曲集を編まれたのだなと、すぐに感じました。

きっと、舘野先生のお母様や故郷への想いもこの曲集の中に込められていて、11月10日で80歳のお誕生日を迎えられ(傘寿記念コンサートを開催されるとのことです)、そのことへの感謝の気持ちも伝わってくるような楽譜です。(勝手な私の想いで書いております)

 

 

さらに偶然にも、9曲目に収められている光永浩一郎さんは熊本の作曲家で、熊本地震の後に「ちきゅうといっしょに」を書かれたと前書きにあり、光永さんとはまだお目にかかったことはありませんが、私がアーティスト登録をして度々ケアコンサートに伺っている「くまもと音楽復興支援100人委員会」のメンバーでいらっしゃることを知りました。

故郷は特別なもの。

熊本地震からの半年、さぞ大変な時を過ごされたのだろうと思いました。

 

 

つい今しがた、その曲を演奏してみました。

哀しみをたたえた美しい3拍子のメロディ。

 

初見で左手だけで演奏するのは慣れておらずはじめは戸惑いましたが、とても美しい曲。

転調して、最後は鐘の音を思わせる希望に満ちたエンディングで、タイトル通り、打ちひしがれているのではなく、私達は地球の上にいるのだから時に地球の都合に翻弄されることもあるけれど、負けないで歩いていくよ……というメッセージを受け取りました。

そう、誰を恨んでも仕方がない、歩いていかなくちゃ。

起こったことは巻き戻せないけれど、これから、という時間を私達はこの地球の上で生きていくのだから、と。

 

 

何か、大きな掌の平の上に私達は生きているのかもしれないと思いながら、いろいろなご縁を思うのでした。

 

 

そして、10月13日のピアノランド25周年の謝恩会のときに、この楽譜の担当編集者さんから聞いたのですが、なんと、舘野先生はすでに10月のあるステージで「想い出の小箱」を演奏なさったそうです!

レパートリーにしていただけて本当に嬉しく、これからどこかで聴かせていただける日が来るかもしれないと思うだけで幸せです。

 

 

ずっと以前に舘野泉先生がご病気をされた後、左手だけの演奏会を始められたと知り、そのときからいつか左手の曲を書こうと心に決めていました。

東日本橋大震災の後、『こころの小箱』を作曲しているときに、その1曲目の「時の砂」とまるで対になったような最終曲「想い出の小箱」ができあがったとき、初めての左手のための曲が完成していたのです。

 

右手を使わないということは、何と大きな可能性に出逢ったことか。

メロディとハーモニーを左手だけで担当するとなると、どうしてもメロディを弾くのは左手の1の指(親指)。

太くて、動きにくくて、右手よりも不器用な左手くんにメロディを? と思うのですが、だからこそ、心の底から汲み上げるようにして書いた本当のことを、嘘偽りなく歌ってくれるのです。

本当のことをとつとつとしか言えない左手の親指にメロディを託す時、ハーモニーを担当する他の指もペダルを踏む右足も左足も、一致協力して音楽の僕(しもべ)になる。

左手の曲を書いたとき、そんな感じがしました。

 

 

 

それから約2年後、『やさしいまなざし』という曲集に「ふたり」と「相響く」という左手の曲を書きました。

もう、左手のための曲を書くのは私にとって特別なことではなく、特に、「ふたり」は、私の両親の様子を思って書いた曲で、ある日ピアノの前に座ったら自然に生まれました。

「まるで父のような(お年から想像しただけで、すみません!)舘野先生に演奏していただけたらどんな世界が現れるのだろう」と、ワクワクが止まりません。

熊本の父もとても喜び、親孝行することができました。

 

私の作品について「小さな作品だけど、何度も弾きつづけるうちに、ささやかな花を開いてくれるだろう」と前書きに書いてくださいました。

雄弁に聴く人をねじ伏せたりしない、凄い、とかきらびやかというのではない、まさにそういうものを書いたつもりだったので、作品をわかっていただけた喜びがじわじわと湧いてきます。

 

 

みなさんにも、いつか弾いていただけたら幸いです。

 

すでに、私の曲集をお持ちの方も、舘野先生監修の楽譜では指使いを取り除かれており、譜ヅラがかなり変わって見えます。

新鮮な気持ちで演奏できるのはもちろんのこと、他の作品も素晴らしいので、どうぞ左手で演奏してみていただければと思います。

 

もちろん、右手でも、両手でも、どんな響きがするのか弾いてみてください♪

そして、(可能なら)左手だけで演奏するときの不思議な感覚と比べてみていただければと思います。

 

 

せっかくの機会なので、今年の12月23日(祝金)のクリスマスコンサートでは、「ふたり」と「想い出の小箱」を演奏いたします。

絵画に囲まれた素敵なサロンで、耳を傾けていただけたら嬉しいです。(熊本へのチャリティコンサートです)

 

 

そして、舘野先生がどちらかで演奏してくださることと思いますので、皆さんご一緒に舘野先生のコンサートに出かけましょう!

 

 

コツコツと作曲してきた作品を舘野先生に発掘していただけた幸せを、また、熊本へもお返ししなくては。

 

 

 

 

 

 

 

樹原涼子
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