第26回 曲のコードと機能を分析しながら、生き生きと弾こう!
夏休み明けの久しぶりのweb連載です。
お元気でいらっしゃいましたか?
今回は、レッスンで取り組みたい「コード&機能分析」について動画をご覧いただきます。
「あたらしいドレス」はわかりやすい和声進行なので、解説を聴きながら、楽しんでいただければ幸いです。
ピアノランドメソッドでは、“聴きとり術”で(『耳を開く 聴きとり術 コード編』を使って)早くからコードネームに触れることを提案しています。
ピアノランドメソッドを使っていない方でも、お辞儀のときの音楽と言えば〈Ⅰ Ⅴ7 Ⅰ〉を思い浮かべることができるでしょう。
目次
●まず、動画を見ましょう! 「あたらしいドレス」
「あたらしいドレス」『ピアノランド』4巻より コード&機能分析
いかがでしたか?
コードの流れ、借用和音がおわかりいただけたでしょうか?
●「借用和音」の解説
ピアノの先生方は聴いただけでお分かりかと思いますが、一般の方やお子さん達のために、もう少し詳しく書きます。
専門用語が難しいところは読み飛ばしても構いません。
調性音楽(◯長調や◯短調と、調性を持つ音楽)は、和声分析(ハーモニーが移り変わっていく様子を理論的に分析すること)が可能です。
この曲は「ド(C)」を主音とする調で、日本語ではハ長調、英語でCmajor(シー・メジャー)、ドイツ語でCdur(ツェー・ドゥア)と呼んでいます。
主要三和音と言われるのは、ドレミファソラシドという音階の、1、4、5番目の音を根音とする和音で、ハ長調では下記の3つです。
Ⅰ ドミソ 主和音
Ⅳ ファラド 下属和音
Ⅴ ソシレ 属和音
属和音は主和音に戻ろうとする働きがありますが、さらにもう一つ、第7音を足すことにより、
Ⅴ7 ソシレファ 属七
となり、属和音から主和音に戻ろうという「ドミナントモーション」の働きがさらにパワーアップするのです。
「ドミナントモーション」という言葉、心に留めておいてください♪
属和音や属七から主和音へ解決しよとするドミナントモーションのエネルギーを利用して、作曲家は様々なストーリーを編んでいきます。
その中に、他所の調の和音を借りてきて使う「借用和音」という方法があり、「あたらしいドレス」にも登場します。
動画で解説している通り、この曲はハ長調なので属七は〈G7 ソシレファ〉ですが、他所の調であるヘ長調の属七〈C7 ドミソシ♭〉が使われていて、ハ長調にはない「シ♭」が出てくるのでその場所はちょっと目立ちます。
そのままヘ長調の主和音〈F ファラド〉に戻りますが、それは元々のハ長調の Ⅳ でもあり、とても自然な流れで、よく使われる進行です。
さらに、〈Fm ファラ♭ド〉が登場しますが、これはハ短調から借りて来たもので、Ⅳm(四度マイナー。ジャズ理論ではこのように呼びます)へと変化します。
これは、左手の「ラ→ラ♭」の半音の変化だけでコードネームを変え、機能(役割)を変えてしまいます。
最小のエネルギーで最大の効果を上げる素晴らしい方法です。
この左手のラインを演奏するときに、それを知っているのと知らないのでは表現力に大きな差がついてしまうのは、言うまでもありません。
みなさんが知っている曲の中にも、おそらく沢山でてくる進行です。
●例えば、調を劇団に、和音を役者さんに例えましょう!
Cmajor劇団の公演にその劇団のメンバーが出演するのは当たり前のことですが、Fmajor劇団のスター〈C7〉がゲストとして客演するとなるとどうでしょう?
さらに、Cminor劇団からのゲスト〈Fm〉も出るとなると、主音を同じくするCmajor劇団のⅣ〈F〉とCminor劇団のⅣm〈Fm〉との違いもより明らかになりますね。
この劇団に例えてコードや和声進行を学ぶ方法は、拙著『“The Four Seasons”ベスト・セレクション』の中で用いており、わかりやすいと好評をいただいています。
そのコードはどこの誰なのか?
本来のポジションで役目を果たしているのか、他所に行って頑張っているのか?
演奏する人はその流れを把握してから練習すると、聴く人の心が自然と動くように演奏できるはずです。
知らない国の言葉をカタカナで発音しているだけでは人を感動させることはできませんね。
●和声進行を聴こうとする大切さ
「あたらしいドレス」の動画を、楽譜無しで「耳から聴く」だけでもコード進行、機能の変化を感じられる方もいらっしゃることでしょう。
“分析”と言えば楽譜を見て視覚的な情報を元に考えていくことが多いと思いますが、時には、耳からの情報だけを頼りに分析する練習も有効です。
“耳コピ”も、絶対音感を駆使してデジタルに聴きとるだけではなく、和声進行の機能を聴きとる訓練がとても大切なのです。
楽譜の上っ面だけを指で追いかけたような演奏にならないためには、作曲家が考えたストーリーを読み解こうとする気持ちを持ち、常に、音の役割を意識して聴いたり弾いたりすることが大切です。
奇しくも、先日のコード塾で受講生の方がピアノランドフェスティバルの感想をこのように述べられたのは嬉しかった!
「樹原先生と小原先生、お二人が弾かれる一音一音には全て意味があって感動しました。それがわかるようになった自分の変化も嬉しかったです」
わぁ!
作曲者とピアニストが、一音一音の意味を伝えようと演奏しているのですから、そのことがちゃんと伝わって本当に嬉しい。
こちらこそ、ありがとうございます♪
コード塾で1年と少し講義を受けて来たみなさんには、一音一音の意味や役割がとても大きく感じられるようになったのだと思います。
だから、意味が込められている演奏とそうでない演奏との違いがはっきりわかる耳になっているのでしょう。
今回のコード&機能分析の手法は、ピアノランドマスターコースやコード塾でみっちりと勉強します。
もっと学びたくなった方は、どうぞご一緒に勉強しましょう。
一音一音の意味を理解してレッスンすることで、普段のレッスンの当たり前のレベルが飛躍的に向上することでしょう♪
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会場でお会いできたら幸いです。
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