第22回 音楽は生きている! 連弾曲だからこその表現を♪
3月2日の日経新聞朝刊の「旬な人時の人」欄に「バイエルを超えたピアノ教本出版 樹原涼子さん」という記事が出ました。
web連載をご覧のみなさまも、よかったら、こちらもご覧ください。25周年を思い出しながら、日記を書きました。
今回は、『ピアノランド』5巻と『ピアノランドコンサート』下巻の連弾の人気曲を取り上げます。
ちょうど、上記の日記に、
と書いた通り、そのことをよく表している連弾曲を2曲を選びました。
解説と合わせて、小原孝さんとの連弾をお楽しみください♪
目次
●初期の作品「哀しい戦士」
まだ、『ピアノランド』として作品をまとめる前、私が駆け出しのピアノの先生の頃のことです。
音大生の頃から教えていた小学生に、発表会のために連弾曲を書くことにしたのです。
当時、定番と言われている楽譜だけでは退屈してしまう子どものために、「弾かされている」のではなく「弾きたい曲」をみつけるのに苦労していた私は、「そうだ!この子のことをよく知っている私が、オーダーメイドのように作曲すればいい」と、ハタと気がつきました。
すでにコマーシャルやアニメの曲等を書き始めている頃で、バブルまっただ中、企業は音楽にもお金を使う時代で、洋楽も邦楽も沢山のアーティスト、作家が活躍していました。
そんな音楽業界とピアノ教育界は遠く切り離されたところにあるようで、この熱気をピアノ教育の場にも持ち込めたら……と思うようになりました。
そんな中で、子供達が「弾かされる」と感じる曲とのギャップを埋めようと、「絶対ダサくない曲、カッコいい曲、今の子供達が弾きたいと思える曲を作ろう」と思ってこの曲を書きました。
「哀しい戦士」という言葉で、子供達は何を思うでしょう。
ゲームやアニメの中の戦士達か、映画やドキュメンタリーを思い浮かべるでしょうか。
子供達にこの曲を弾いてどんなシーンを思い浮かべるか聞いてみると、「前半は戦う勇気や重い心、中間部は故郷に待つ家族を思うシーン」「アニメの主人公が奮い立つところ、敵をやっつけても勝った喜びだけじゃなくて哀しみがある」「戦いたくない気持ち、自然を思う気持ち」等、様々です。
これまで、歌詞のある曲を沢山演奏してきた子供達は、歌詞がなくても歌うように演奏することが身についています。
対応する『ピアノランドたのしいテクニック』下巻で曲の表現に必要なテクニックも身につけ、イラストがなくても、メロディとリズムとハーモニーから、そしてタイトルもヒントにして、子供達は音楽で人に何かを伝えることができるでしょう。
「哀しい戦士」『ピアノランド』5巻より 演奏:小原孝/樹原涼子
同じメロディに対して前半と後半では異なる伴奏型になっていることに気づくように、お互いに影響し合うように促し、中間部で短調から長調に転調したところはコントラストが出るように音楽を作っていきましょう!
●『ピアノランド』出版後の作品「子猫のワルツ」
『ピアノランド』につづいて『たのしいテクニック』シリーズを出版、その後ピアノランドスクールの発表会用に子供達に作った曲で『ピアノランドコンサート』シリーズを作りました。
双子の姉妹のために作曲した「子猫のワルツ」は、2匹の猫がじゃれあったり威嚇しあったり(?)、その表情のやり取りで様々な表現が可能な曲です。
子供達にも先生にも人気がある曲なので、みなさんもぜひ、演奏してみてください。
「子猫のワルツ」 『ピアノランドコンサート』下巻より 演奏:小原孝/樹原涼子
プリモの初めの音型の弾き方(音色、テンポ、強弱、ニュアンス等)によって、次にセコンドがどのように弾くかが決まり、猫達の会話はつづきます。
「練習したように弾く」のではなく、「相手の出方によって変わる音楽の流れ」を感じとる力を育て、「反応して演奏する楽しさ」が学べるのも連弾ならでは。
反応するだけではなく自分からも仕掛けていったり、子猫をイメージするだけで、様々な表情が生まれてきますように。
このレベルの連弾では、プリモもセコンドもどちらのパートに入れ替わっても弾けるようにして、さらに音楽的な自由さ、面白さを何通りも味わえたらステキです。
次回は、ここ数回でお伝えしてきた『ピアノランド』4、5巻や『ピアノランドコンサート』下巻を弾きこなすための「テクニック」の学び方について書いていきます。
P.S. 「ピアノ」という楽器を愛する方々と、日本に居ながらにして”世界中の名器”を訪ねる旅をしています。
3月27日、「樹原涼子と名器を巡る旅 第4回 ファツィオリで樹原作品を弾く・聴く・学ぶ」に参加してみませんか♪
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