第8回 第一段階の仕上げです!
連載「ピアノランドの教え方」第8回は、ピアノを弾くための準備段階である“第一段階”の仕上げ時期について書いていきます。
『プレ・ピアノランド』1、2巻はピアノを弾くための準備、ピアノを弾くのは3巻から、ということについて、出版当初は驚く方が多かったのですが、この頃は“二段階導入法”を取り入れて成果を上げている人が増えてきて、毎年春は『プレ・ピアノランド』重版ラッシュです。
ピアノランドマスターコースやピアノランド勉強会を卒業した先生達は、「“プレピアノコース”を設けてじっくりと指導する間に、親御さんにアコースティックピアノの必要性を伝えて、ピアノ購入の準備ができるというのも副産物です」と喜ばれています。
また、リトミックとピアノを教えている先生からは、ピアノに切り替える時期に「ピアノに特化した準備ができて助かる」と、“二段階導入法”が好評です。
アダルトビギナー、自治体主催のシルバー教室等でも、『ピアノランドたのしいテクニック』上巻を使って、“二段階導入法”の脱力や指の体操、読譜メニューが役立っているとの報告もあり、年齢に関わらず、ピアノのレッスンには“二段階導入法”は有効なのだと、改めて感じています。
今回の目次です。
●ピアノを弾くための〈4つの柱〉を、バランスよく育てられましたか?
●ピアノを弾くための〈4つの柱〉を、バランスよく育てられましたか?
4つの柱は、〈聴く〉〈歌う〉〈動く〉〈見る〉でしたね!
『プレ・ピアノランド』各巻を終了するまでに、この4つの柱それぞれに、どんな力をつけることができるかを、わかりやすい表にしました。
その中で、第一段階終了時に何ができるようになるのかを、色で囲みましたので、ご覧ください。
『プレ・ピアノランド』各巻 P.5
例えば、〈聴く〉力が1巻、2巻でどのように育つのかをご覧ください。
2巻終了時、まだピアノの演奏はしていませんが、ピアノの音のしっぽまで聴きつづけられることはもちろん、固定5指のポジションの音が聴いてわかる、(習った曲であれば)長調か短調か、拍子も聴き分け、そのドミナント・モーションがわかり、先生の演奏を聴いて単音か和音かアルペジオか、上行か下行かがわかるようになります。
前回ご紹介した“聴きとり術”を併用していれば、コードネームでも答えられることが増えていきます。
“二段階導入法”をご存じない方は「演奏もしないうちから、そんなことができるの?」 と思われるかもしれませんが、聴くことだけに集中するからこそ力がつくのです。
このあと、〈聴く〉クオリティを落とさずに、演奏しながら自分の音も共演者の音も聴けるように、気をつけて育てていきましょう。
同じように、〈歌う〉〈動く〉〈見る〉の柱においても、いつの間にか多くのことができるようになっているはずです。
こうして、いよいよ演奏への準備が整っていくわけですが、具体的にできたかどうかの判断に迷う先生のために、メニュー30にまとめのページを作りました。
●第一段階が「仕上がった」と言える状態は?
この見開きのページで、4つの柱の中で見落とした点がないかどうか、チェックしていきましょう。
○できる! ◎じしんあり! もうすぐできる!
と指示していますが、まだできないところは×や△にしないで、「もうすぐできる!今、頑張っているところ」と現在進行形と感じられるように指導してください。
明るい見通しを持って練習した方がいいのは、大人も子どもも同じです。
また、このまとめのページで復習することで、これまで沢山頑張ったことを誉めてあげてください♪
『プレ・ピアノランド』2巻 P.46 47
理想的なのは、このチェック欄にすべて◯がつくことですが、ほとんど◯になっていれば、「もうすぐできる」項目をケアしながら、第二段階のピアノの演奏に進むことも可能です。
その辺りは、教える人の責任においてお考えください。
ただし、あれもこれもできていないのにピアノを弾かせたのでは、“二段階導入法”を行なった意味がありませんので、見切り発車はしないこと。
あくまで、「この部分は私が気をつけながら進んでいけば大丈夫」と、先生が思えればよいのです。
例えば、読譜のときにヘ音記号のソとファがごっちゃになっているものの、聴き分けはできているし、その他の柱はすべて大丈夫!というのであれば、ピアノに進んでもよいでしょう。
ですが、きれいな手の形が作れず、指の独立もままならないのであれば、ピアノを弾かせるのは早過ぎます。
譲れる部分と譲れない部分を、先生がしっかりと見極めることが大切です。
●全てのメニューをこなさなければいけないの?
いつも思うのは、「何のためにしているか」という意識を持って教えてほしいということです。
「はじめから美しい音でピアノを奏でることができるようにするために“二段階導入法”で教えているのだ」という自覚があれば、全てのメニューをこなすことが目的ではなく、メニューは上達するための手段であることがお判りいただけるでしょう。
すでにスラスラと楽譜が読める子どもに音符カードを使う必要がないのは当然のことです。
何ができて,何ができないのか、足りない力はどの部分かを、教える人が意識できるようにするために、4つの柱に沿ったメニューがあるのです。
例えば、多くの人には、バッハやモーツァルト家のように幼少の頃から周りに一流の音楽が溢れていて、習うともなくできるようになってしまう、というような特別の環境はありません。
何もかも一からスタートする場合に必要と思われることを、なるべく楽しく、もれなくカバーしたのが“二段階導入法”です。
子ども達は、育った環境、体格や手の器用さ、リズム感、感性等、一人として同じケースはありません。
“二段階導入法”60のメニューは、それぞれに異なる子ども達の足りないところを充分に補い、よいところをさらに伸ばすために、役立ててください。
すべてのメニューを行なう子どもに対しても、「教材をこなす」のではなく、メニューの目的を達成するために行なっていることを忘れないで指導しましょう。
また、すでにピアノを弾いている子どもに対しても、指のケア、聴き方の訓練が必要だったり、歌心が足りない…と感じた場合は、いつでも “二段階導入法”のメニューで補強することをおススメします。
●〈リズムボール〉について
では、これまでに取り上げていなかった、ピアノランドにおける〈リズムボール〉について、動画でご覧いただきたいと思います。
これは、私がバレエやジャズダンスを通じて体得したことが元となっていて、プロの音楽家と共演するときに感じる、目に見えないリズムの動きや空間、感じ方を子ども達に伝えるために考えた言葉であり、手法です。
『プレ・ピアノランド』の中で、脱力して叩く〈リズムボール〉は、とても大切な概念です。
同じ大きさの円を叩くことでイン・テンポをキープする練習をしたり、様々な拍子、リズムの曲を〈リズムボール〉を書いたり(円の大きさを変えて書く)、音楽に合わせて実際に叩いてみたり、視覚的情報と結びつけながら教えていきます。
“二段階導入法”で学んでいない場合でも、読譜が苦手でリズムが乱れる子どもには、〈リズムボール〉は大変有効です。
また、脱力が苦手な子どもにも、〈リズムボール〉を叩くことで大きな効果が上がります。
いかがだったでしょうか?
次回は、みなさんからのご質問があれば、お答えしていきたいと思います。
8回に渡って、「ピアノランド」の“二段階導入法”についてかいつまんでお話してきました。
全ての要素について触れることはできませんでしたが、「ピアノランド」をご存じない方にも参考になれば幸いです。
興味のある方は、ピアノランドメイトに入会してご一緒に勉強してみませんか?
入会案内は、このページの一番下にあります。
次回からは、いよいよ演奏に入ります。お楽しみに!
公開日: