第7回 “聴きとり術”も取り入れて、“二段階導入法”を!
連載「ピアノランドの教え方」、楽しんでいただけていますでしょうか?
毎回、沢山の「いいね!」をいただいたり、セミナーで声をかけていただきありがとうございます。
ゴールデンウィークのまっただ中ではありますが、動画のも何とか無事に終了!
今回は、大好評の『耳を開く 聴きとり術 コード編』(音楽之友社)を、どのように「プレ・ピアノランド」のレッスンに取り入れていったらよいかを、〈聴く〉メニューの一環としてご紹介します。
楽器を勉強する人なら、初心者でも上級者でも、幼児でも大人でも、アマチュアでもプロでも、とにかくコードを知らない人はコードを聴く練習を始めて、耳を開いていきましょう!
コードを習って来なかった世代の先生方にとっては、荷が重い、気が重いことかもしれませんが、『耳を開く 聴きとり術 コード編』を使って教えていけば、一石二鳥! 教える人も習う人も一緒に、幸せにコードを覚えていくことができます。
★“二段階導入法”と“聴きとり術”の併用方法をさらに詳しくご覧になりたい方へ
昨年11月に行なったセミナー「新しい二段階導入法を学ぼう!体験しよう!」が、ピアノランドメイト会員専用DVDになりました。お問い合わせください。
今回の目次です。
●コードを教えることの意味、大切さ
「ピアノランド」シリーズのあちこちに、さり気なくコードへの導入が散りばめられていることをご存知ですか?
「ピアノランド」を発行した1991年頃には、コードネームの話をすると拒絶反応を示すピアノの先生が多かったので、いつの日かきちんとしたコードの本を書こうと胸に秘めて、コツコツと意識改革のセミナーや執筆を続けながら、「ピアノランド」シリーズの中にその種を蒔き、育ててきました。
そして、やっと14年目にして『The Four Seasons ベスト・セレクション』を、24年目にして『耳を開く 聴きとり術 コード編』を出版することができました!
音楽は、メロディ、リズム、ハーモニーの三要素からできていますが、「ハーモニーが一番教えにくい」と感じているピアノの先生が多いようです。
その理由はいくつか考えられますが、西洋音楽が日本に入ってくる以前は、日本の音楽は単旋律をユニゾンで合わせるものが中心で、「ハモる」という概念がなかったことが大きいでしょう。
明治から大正にかけて、「斉唱」しかしたことがない多くの日本人が、西洋の「合唱」に慣れるのはとても大変だったのだそうです。
もう1つ、ハーモニーが教えにくい理由は、コードネームを使っていないから。
名前の無いものは概念としてとらえどころがなく、差別化しにくいので、覚えるのも使い分けるのも不便なのです。
運動場に沢山いる子ども達に名前がなかったら、特定の子どもを呼ぶときにどうしたらいいでしょう!
西洋音楽は和音、ハーモニー無しには成立しません。
音に名前があるように、英語圏では、和音にもを名前があります。
コードネームは、楽語として普通に使われている固有名詞ですから、日本でも早くから教えるべきではなかったか…と思うのですが、日本に「和音」の概念がなかった頃には、それを個別に翻訳することも、英語名のまま使うことも考えられなかったのかもしれません。
現代にあっては、作編曲や演奏の仕事をするにもコードネームは必須です。
小中学校の音楽の本にも、コードネームは当然のように使われていますので、ピアノ教室できちんと教えてあげるべき時代となりました。
(ハーモニーの動きをコードネームで意識することによって、機能も格段に感じやすくなり、曲の構成が把握できるのですから、音大でもコード分析と機能分析を結びつけて教えるクラスがあってもよいのではと思います!)
“ハーモニーの推移を言葉で表す力”は、音楽をする人には必要です。
まず、コードの響きと名前を覚えていく“聴きとり術”の第一歩を、動画でご覧ください。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』12のコードより「Cを聴きましょう!」
いかがでしたか? 響きと名前を一緒に覚えていくことができそうですか?
友達の顔と名前を一緒に覚えていくのと同じです。
レッスンの始まりの3分間を使って、楽しく、簡単に、1ヶ月に1つのコードを覚えていきましょう♪
●ドミナント・モーションを教えることの意味、大切さ
幼稚園などでお辞儀のときに使われる、あの「ジャーンジャーンジャーン」という和音。
これが聞こえたら、誰もが自然にお辞儀をしたくなってしまうなんて、音楽の力は凄いと思いませんか?
ⅠⅤ7 Ⅰ。この、主和音に解決しようとする強いエネルギーを、ドミナント・モーションと呼びます。
ドミナント・モーションは、お辞儀をさせたり、曲を終わらせたり、セクションの区切りを表したり、借用和音となって刺激を強めたり、音楽の骨格を形作っていくのです。
『プレ・ピアノランド』1巻のメニュー15「わおんでおじぎゲーム」で、子ども達はドミナント・モーションに出逢います。
この頃に『耳を開く 聴きとり術 コード編』から、ドミナント・モーションの課題を聴かせるといいでしょう。
動画では、〈C → G7 → C〉というドミナント・モーションを取り上げます。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』ドミナント・モーション編より〈C → G7 → C〉
『プレ・ピアノランド』1巻のメニューには長調と短調を聴きわける体操メニューや、短調のおじぎゲーム、指人形でおじぎゲームなど、長調短調、ドミナント・モーションに関するメニューが沢山も登場します。
その頃には“聴きとり術”の〈Cm→ G7 → Cm〉のドミナント・モーションに進むとよいですね!
実は、この〈ドミナント・モーション〉と呼ばれる”主和音への解決しようとする働き”には、「美しい」「不思議な」「大人っぽい」「カッコいい」「シビアな」「お洒落な」「カワイイ」等、様々なバリエーションがあります。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』では、よく使われる、代表的な12種類を紹介しています。
本の中では、1ヶ月に1つのドミナント・モーションがマスターできるようにカリキュラムを組みましたので、ぜひ、トライしてくださいね!
●音楽を第一に、音楽のために教えていくということ
前回、〈聴く〉→〈歌う〉→〈見る〉の順番が大切だとお話いたしました。
何度も響きを聴いて味わい、名前で呼び、歌うことで、響きの変化とコードネームが結びつき、コードの動きに敏感な耳が育っていきます。
頭の中が柔らかい、そして、大人よりも可聴範囲が広い子ども達は、瞬く間に覚えていきます。
忘れても、繰り返せばいいのです。気楽に、楽しくスタートしましょう!
音が“ひらがな”だとすると、コードは意味のある“漢字”と例えることができます。
そして、ドミナント・モーションは、四文字熟語のようなものだと言えるかもしれません。
『耳を開く 聴きとり術 コード編』の目次で、取り上げているコードネームと、ドミナント・モーションがご覧いただけます。
音楽の意味を理解して表現できるよう、音楽を表す語彙を豊富にストックしていきましょう。
音楽を第一に、音楽のために教えていくということ。
みなさんが習って来なかったことを、新たに教え始める勇気を持ちましょう。
すでに、沢山の方が毎レッスンに取り入れて、効果を上げています。
“聴きとり術”勉強会にも、足を運んでみてください。
「ピアノランドの教え方」、次回もお楽しみに!
公開日:
最終更新日:2015/05/20