第5回 理想的な手の形 タッチポイントを探そう!
前回は、ピアノを弾き始める前から教え始めてほしい、ピアノを弾くために有効な“指の体操”を2つ、動画でご覧いただきました。
何と言っても、動画はいいですね! 百聞は一見に如かず、身体の動きを表すためにいくら言葉を費やしても伝えきれない部分と、さらには“楽しさ”が伝わったのではないかと思います。
『プレ・ピアノランド』で学ぶこれらの体操は、ピアノを弾く準備期間はもとより、ピアノレッスンをしているどの段階の人にとっても、指の動きをスムーズにしたり、指の独立を助けたりするものです。
指の体操を繰り返すことで、子ども達は指を動かす楽しさを味わい、脳はその度に“正しい指の動かし方”の確認ができ、シナプスが強化され、さらにテンポアップに挑戦すれば演奏への応用力もアップします。
ピアニストのような美しい演奏を目指すためには、脳から身体各部へと精密な指令を出すこと、そして、それに反応する身体を作っていく必要があります。
近年は、幼児のためだけではなく、もっと大きくなった子ども達の悪い癖を直してタッチを矯正するために使ったり、アダルトビギナーの練習にも“ニ段階導入法”の〈動く〉メニューを使う先生が増えてきました。
ここで全ては紹介しきれませんが、どうぞ、『プレ・ピアノランド』1巻、2巻、または『ピアノランドたのしいテクニック』上巻の中にある〈動く〉メニューに、楽しく取り組んでみてください! いくつかだけでも、もちろん効果が上がります♪ (体操メニュー59種はDVDでご覧になれます)
それでは、理想的な手のフォームについて、ご一緒に考えていきましょう。
今回の目次です。
●美意識を持たせましょう!
美しい響き、理想的なフォームを教えるためには、まず、先生の美意識が高くなくてはなりません。
多くの子どもにとっては、自分の先生=音楽的環境、となるわけですから、先生は常に、美しいフォームで美しい音色を心がけて手本や伴奏を弾いていただけたらと思います。
私はレッスンでも、演奏会のような真剣さと繊細さを持ってピアノを弾くよう心がけています。
そのことは確実に子ども達の耳に伝わり、それが、その子にとっての当たり前のレベルとなるからです。
美しいか、美しくないか。
それは、見た目の動きでも、聴こえた音でも判断できることです。
実際にピアノを弾かせる前に美意識を育てておかなくてはならない、ということを、教える人は意識しておきたいものです。
はじめてピアノを弾くときに、美しい音を欲する耳と心、美意識を持ち合わせていれば、そして、そのための方法を具体的に身につける機会さえあれば、子ども達はぐんぐん成長していくことでしょう。
次の項では、美しいフォームと音色の関係を学ばせるための、第一歩がスタートします!
●理想的なフォームとは? タッチポイントを探そう!
理想的なフォーム。それはもちろん、美しい音を響かせることができるのが、よいフォームです。
ですが、私達の腕や手、指は、ひとりひとり違う特徴を持っています。
指には長い、短い、太い、細い…等の特徴があります。
爪は、大きい、小さい、四角い、丸い、細長い、短い等。
手の筋肉も、厚い、薄い、固い、やわらかい等、様々な特徴を持っています。
それらの組み合わせもまちまちです。ひとつとして同じ手はありません。
そこで、どんな形の手や指であっても、指先が鍵盤に触れる安定する面を上手にみつけ、その中心点(ピアノランドで言うところの)「タッチポイント」の位置を意識することで、一人一人の美しいフォームを作る方法を考えました。
まずは、タッチポイントの基本位置を各指ごとに意識させることで、指先の触覚も、そこから生まれる音色に対する感受性も育っていきます。
このように育てた子どもは、やがて、タッチポイントの位置を少し変えることによって、鍵盤と指の接する面積を変えて様々な音色を生み出すことができることに気づき、その繊細な感覚を音楽表現に生かすようになります。
自分の指を1本ずつ眺め、どの辺りで、どの角度で鍵盤に触れたら美しい音が生まれるのか、先生も実験してみましょう。そして、子ども達にも、もっともっと興味を持たせましょう!
さぁ、そのための第一歩です!
『プレ・ピアノランド』2巻 メニュー3 「2・3・4・5の指のタッチポイント」
それでは、子ども達にどのように伝えたらよいか、動画でご覧ください。
そうそう、ここには良い例と悪い例があります。「クイズ」として子ども達に見せていきますが、くれぐれも、悪い例を真似させることのないよう、よろしくお願いします!
このレッスンをすると、まだピアノを弾かせていない幼児でも、手のフォームに対する美意識が育ち、善し悪しがわかるようになっていきます。下記は、ピアノを弾き始める前の第一段階でレッスン中だった教え子の台詞です! 笑
「先生、お友達ね、バタバタ弾きなのに発表会で弾いてた。指がつぶれて…、音もバタバタしてた。かわいそう」
「幼稚園の先生、カツカツ弾きだった。力入ってる」
「テレビでアシュケナージって言う人が、タッチポイントでピアノを弾いてたよ!」
●自分の手で、きれいなフォームを作ってみよう!
よいフォームのイメージを持たせることができたら、子ども達にも挑戦させましょう!
ここでは、まだすぐにピアノを弾かせるわけではありませんが、きれいなフォームの作り方を学び始めます。
『プレ・ピアノランド』2巻 メニュー4 「そーっとタッチ」
自分の手を眺めているだけでも、日々発見があります。
今年のピアノランドフェスティバルのプレ・セミナーのテーマは、「美しい響き、脱力、ベースラインのステキな関係」です。
今回のテーマとも深く結びついています。
楽しいとか、美しいとか、面白いとか、ピアノを習う人自身が感じられるように教えていくことがとても大切だと感じています。
私はこう習ったとか、昔はこうしたものだとか、そのような情報をひとりひとりの指導者が日々更新する努力をしていくことが、進歩に繋がっていくのではないかと思っています。
今できる最善のことを提案していけたら、過去の自分の考えも乗り越えていけたら…と、連載をつづけていきます。
ご覧いただき、ありがとうございました!
次回は、4つの柱から、〈歌う〉〈見る〉メニューについて、お話する予定です。お楽しみに!
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