父の東京オリンピック 「いだてん」の感動と共に
父、長谷川孝道が記した『走れ二十五万キロ マラソンの父 金栗四三伝』(熊日出版)が公式資料となったNHK大河ドラマ「いだてん」がいよいよ終盤戦に入りました。毎週の放映を楽しみにしていた父でしたが、最終回を待たずに4月17日に帰らぬ人となりました。父のために書き始めた「いだてん日記1」「いだてん日記2」(伝記とドラマの両方を楽しんでいただけるよう、いろいろなエピソードを書けたらと思いスタートしました)も、父亡き後はとても書き続ける心境にならず、ドラマを見るのがやっとでした。けれど、今日の第41回「#おれについてこい!」を見たら、グッとくるものがあり、今日は日記を書こうと思います。
父は、子供時代に熊本の陸上競技協会の会長だった金栗さんに「がんばれ!」と声をかけてもらいながら、トレーニングに励み、早稲田の競走部に入学(本当は法学部なんですが、もう、競走部に入ったようなもので……)、苦学して卒業後大手新聞社の誘いを断り熊本日日新聞に入社しました。その後、東京オリンピックを前に、熊本で開催される国体を盛り上げようと、金栗四三さんのインタビュー連載を企画、自ら金栗さん宅に通い、幼少期からオリンピック出場、その後の話を克明に書き留め、伝記として出版しました。絶版となった後、金栗さんの取材といえば、全国から父のところへと取材陣が集まるようになり、金栗さんの伝記に加筆した伝記を再出版したのです。それが、今回のドラマの前半、金栗さんを描くにあたって1番の資料となり、タイトルロールに「長谷川孝道」の名前が出ているのは、本当に嬉しいことです。(そのあたりの詳細は、こちらに記しています)
今日は、父が新聞記者として取材した東京オリンピックについて、父が遺した記念の品々を見ていただこうと思います。父の青春時代の大きな仕事であった、金栗四三さんの伝記執筆、そして東京オリンピック。「いだてん」でこの時代、どのようにして東京オリンピックまで漕ぎ着けたのかを見ていると、それを必死で取材して伝えようと努力した父達の高揚した気持ちまで伝わってきます。
オリンピック期間中、父が身につけていた腕章。黒いゴム紐2本が付いています。
何だか、どの記念品よりも私にとって大切に感じられます。
嘉納治五郎さん、金栗四三さん、田畑政治さん、その他多くの人々の情熱がリレーのように繋がって開催された1964年のオリンピック。この腕章をつけて、父は、グラウンドを駆ける選手を、水を切って泳ぐ選手を、必死に取材していたんだなぁとその様子を想像しています。
記者の身分証明書。父の仕事中の顔ってこんな風だったのか……と、記憶の中の若かった父を思い出してみましたが、少しイメージが違います。
PRESS関係者へ送られた記念のバッジでしょうか。
身につけていたかもしれませんが、こちらは保存状態も綺麗です。
こちらは、身につけていたのでしょう、使った感じがします。
よく見ると、バッジの上部に細い穴があいていて、糸で縫い付けてあります。
布の上部をピンで留めるようになっています。
記者には、限られた路線を自由に乗れるパスが配られていたのですね。
日本語と英語での説明図が付いています。
なんて素敵なデザインなのでしょう!
東京オリンピックの公式プログラムの表紙です。
開くと、加盟国の一覧、競技別の会場、日程、収容人数が記されています。
続くページにはその詳細、東京大会の組織と機構、競技施設の案内、オリンピック道路の紹介、公式種目と参加状況、これまでの日本の参加状況とメダル、ディプロマ獲得数、オリンピックの歌3曲の歌詞が掲載されています。
開閉会式実施要項。
開会式、閉会式の実施要項が詳しく書かれていて、誰がいつどこで何を行うのかを記者達が把握するための必需品だったと思います。競技場の見取り図、選手団の移動コース、係員の任務、係員の名簿、さらには式の練習計画も。
こちらは、熊本日日新聞社の取材計画書。
総勢20人の取材チームをどのように配置して取材するのか、熊本出身の選手はもちろんのこと、日本人選手、世界の選手の活躍を伝えるために、この計画書を作るのには苦労したと聞きました。話には聞いていましたが、実物を見るのは遺品を手に取ったときでしたから、ああ、一緒に見ながら思い出話を聞きたかったなぁと思いました。
東京オリンピックの入場券。
記念切手もありました。
番組でも、デザインの様子がありましたが、インパクトのある美しいデザインだと思います。
その他にも、父が記念になるものをあれこれ持ち帰っていました。
これは、金の盃。
表と裏の模様の違いがわかるでしょうか。
メダルとペンダントです。
横2.5、縦4センチほどの小さなバッジ。
ちょっと重くて、素敵です。
こちらは立派な桐の箱入り。
これにはピンがついていません。ずっしり。
メダル3点セット。
小さな白いプラスチックの人形達が何体か。
これは、公式のお土産なのか、何かのオマケなのか、よくわかりませんが、ビニール袋に入っていたものです。
可愛らしいサイズのスプーン。
一度も使われることなく、しまわれていました。
これらの品々を見ているだけで胸がいっぱいになります。
また、いだてん日記を書きます。
今日は、「いだてん」の制作チームの皆さんにとって、大きな試練(2度目ですね……)の回でした。
何度も大変なことを乗り越えて、でも、素晴らしいドラマを作っていらっしゃると心から思います。
父に代わって、制作チームのお一人お一人に心から感謝申し上げます。
次回は、父と金栗さんのことをもう少し書きたいと思います。