熊本地震その2 そしてピアノランド25周年記念セミナー開催

熊本地震その2 そしてピアノランド25周年記念セミナー開催

熊本の地震は、おさまるどころか長期化して大変なことになっています。

19日の日記をご覧になった方からもご心配いただき、沢山のお見舞いコメントをありがとうございます。

あれから約1週間の東京での私は、東京でできることを頑張ろうと思ったものの、多発する大きな揺れに心配で不安な日々を過ごしました。

 

 

電話口で「大丈夫」と父が言っても、「次の揺れで家がつぶれてしまったらどうしよう」と、心がキュッとなるのです。

いつもはテレビをほとんどつけない生活ですが、今回ばかりはニュースが気になってしょっちゅうテレビをつけていました。

「熊本地方、強い揺れに警戒してください!」とアナウンサーが叫ぶので慌てて実家に電話をすると、「ああ、今、酷い揺れだ」と言われることもしばしば(汗)。

ああ、私が電話している場合じゃなかった、父は安全なところに逃げなくちゃいけないのに! と、後悔したりドキドキしたり。

被災現場の映像も心を暗く憂うつにします。

 

実家は、本震でかなり瓦が落ちたので、親戚や近所の人がみなで屋根に上ってシートをかぶせてくれたとの有り難い知らせも届きました。

ですが、予報で「今夜の熊本は雨風が強いでしょう」となると居ても立ってもいられず、またまたテレビをつけたり消したり仕事にならない状態がしばらくつづきました。

離れていると、本当に心配がつきません。

 

全便欠航だった飛行機が少しずつ飛び始めた頃、妹に「心配だから飛行機が取れたら手伝いに行こうか」と相談したら、「水も食料も、もう1人分必要になるから、今は来なくてもいいよ」とのこと。

そうなんです。

自分の安心のために行きたい、と思った私。

飛行場は阿蘇に近いので、飛行場から家まで交通ルートが確保できるかもわからず、かと言って、新幹線で博多まで行ったとしてもその先は線路が復旧していないので、そんな中、無理に出かけて行っても、到着するかどうか逆に心配をかけてしまうことになる……。

 

 

妹は、やんわりハッキリきっぱり、「来なくていい」と言ってくれたので、少し心が落ち着きました。

妹は小学校の校長先生なので、もう何日も家に帰れず、体育館に泊ってみなさんの世話をしながら、実家にも度々連絡を入れ、報告してくれました。

彼女は、私よりもしっかり者で、緊急時にも冷静。

しかもとびきりの笑顔で頑張っているに違いありません。

熊本県や熊本市の職員の人達も応援に来てくれてとても助かったこと、避難所のみなさんにも笑顔があるから大丈夫とのこと、やっと数日ぶりで家に戻って眠れそうなことなど、本当は疲れてクタクタで苦労も多いはずですが明るいメールが届きます。

 

 

 

実家に毎日食事の差し入れをしてくれる叔父夫婦や、何かと気にかけ、見守ってくれるみなさんのお言葉に甘えよう。

気がつけば、地震の心労で風邪をひき、貧血でフラフラして仕事も進んでいませんでした。

人と接する仕事(教える、会議、連絡等)はできても、考える仕事(本やピアノランドメイトの原稿を書く)は全滅。

……被災していない私の方が、なんと情けないことでしょう。

 

熊本在住の2人のピアノランド勉強会講師も、ピアノランドメイト会員の方達の多くも被災していて、メールやSNSで情報が届きます。

4月は、福岡の2クラス、熊本の私が担当する1クラスが地震のために延期になりましたが、熊本から講師を派遣している広島と倉敷クラスは、在来線が動き出したからと執念で出張してくれて、みなさんに喜ばれました。

「家具が倒れた部屋にじっとしているよりも、行けるものなら出かけて行って講義をさせて欲しい」という講師の強い希望に、被災した人にこそ、音楽が、仕事が必要なのだと、ハッとさせられました。

 

 

飾りケイ

 

 

このような最中に、否応なく迎えた4月25日のピアノランド25周年の特別企画セミナー

“時代とともに進化をつづける「ピアノランドメソッド」の全貌”という、壮大なタイトルです。

この25年の集大成を! と張り切っていた私ですが、しばらく地震で心がザワザワしていたのでレジメ作りも思うように進みませんでした。

でも、四半世紀かけてここまできたメソッドです。

昨日今日思いついたことを話すわけではありません。

「今まで作ってきたピアノランドシリーズの全貌を、歴史の中で俯瞰してみよう」と決めたら、最後の二日間にスラスラと構成が出来上がりました。

 

ピアノランドメソッドのどのシリーズを書くときも、全体像がくっきりと輪郭を持って見え、しかも、細部まで見渡せるという、自分で書いているというより、そこにあるべきものをそこに置いていく、とでもいうような必然性を感じるときに、筆が進みました。

まさに、そのようにして書いてきた『ピアノランド12345』『ピアノランドたのしいテクニック上中下』『ピアノランドコンサート上中下』『プレ・ピアノランド123』『ピアノランド音楽ノート』『耳を開く 聴きとり術 コード編』の有機的な関係を、一気に説明できるなんて、なんてステキなことでしょう! そう考えたら、元気が湧いてきました。

 

2016年ピアノランドシリーズ表紙写真

 

 

最後は、プレッシャーではなく、喜びに包まれて内容が完成、ヤマハ銀座店で2時間、しっかりと伝えることができました。

作曲家として演奏家として録音現場で感じた、活躍するプロと街のピアノ指導現場とのギャップを埋める為に考えた12のことを、どのようにピアノランドの中に反映させていったか、しっかりと伝わったと思います。

昭和時代の教育を受けてきた私が、平成になって生み出した『ピアノランド』は、20世紀から21世紀を橋渡しするメソッドです。

時代を俯瞰するようにピアノランドメソッドの内容を伝えていく元年として、スタートを切ったつもりでこれからも頑張ります。

おいでくださった皆様、ヤマハ銀座店のスタッフの皆様、音楽之友社の皆様、ありがとうございました!

また、改めてこのセミナーのことはまとめたいと思いますし、各地へ持って行けたらいいなと思います。

 

 

 

さて、毎日の日課となった実家への電話。

屋根の応急処置は終わったものの、本格的修理はまだまだ先まで待たなくてはならないこと、梅雨入り前にできればいいけれどと話した所で、明日の九州は大雨だと知ってまた心配になる私。

特に、地盤が緩んでいる地域のみなさんが無事でありますように!

これ以上、土砂崩れが起こりませんように。

 

明日27日は、29日の震災支援コンサートの全員で歌う新曲(くりーむぱんだ作)のリハーサル。

コンサートの寄付を当初は気仙沼のホールのピアノのために使う予定でしたが、小原さんが熊本と大分への支援金にもしましょうと提案してくれて、気仙沼の方も了解してくださって「半分こ」が決まりました。

みなさんのあたたいお気持ちに、心から感謝いたします。

大入りのライブになりそうです。出演者全員で心を合わせて頑張ります!

5年前の震災後に復興を願って制作したCD「風はどこから」の中からも、人気曲を演奏いたします♪

 

 

HARA HARA 倶楽部  CD「風はどこから」

kazehadokokara-l

 

 

明後日28日はマスターコース、29日がコンサートというスケジュール。

そして、それが終わると遅れ気味になっている本の原稿が待ち受けています。

ゴールデンウィークに仕上げるつもりの原稿を持って帰るべきか……。

地震恐怖症の私が揺れる中で楽譜が書けるか、ピアノを弾いている場合か……。

「帰らなくていい。大丈夫だから、仕事を優先しなさい」と言ってくれる父の大きさに、また、涙腺が弱くなります。

 

明日は、福岡までの新幹線がやっと復旧するようです。

毎日震度4クラスの地震が何回もつづいていることも忘れず、熊本、大分のみなさんの無事を祈ります。

 

 

 

 

樹原涼子
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