第23回 ポジション移動〈とぶ〉&同時、切分、あとふみペダルを覚えよう!
ピアノに、もしもペダルが無かったら、こんなにピアノは愛されなかったのではないかと思います。
一旦音を出したら減衰するしかないピアノにとって、その減衰に彩り豊かな表情をつけてくれるのがペダル(右ペダル)です。
右ペダルは弦の振動を止める役割の「ダンパー」を解除するための装置で、ペダルを踏むと、演奏している音以外の弦のダンパーも上がり、反響板からそれらすべての音の倍音が響きます。
たった1つの音であっても、同時に踏むか、途中から踏むか、深く踏むか、浅く踏むかで音色は変わります。
音楽を分析して、いつどのように踏むかプランを立て、様々な踏み方をマスターして、いつペダルを上下したか、聴いている人が全く気づかないくらい自然にペダルが使えたらいいですね!
そんなペダルの素晴らしさ気づかずに、ただ、なんとなく習慣でペダルを踏んでいる人を見かけると、とても「もったいない!」と思います。
子供達が、ピアノにとっての“魔法の杖”とも言えるペダルと、しっかりと対面できるように願って書いたレッスンです。
ピアノランドマスターコースでは、このペダルの教え方について、かなり時間を割きますが、web連載でも、その一端をご覧いただき、役立てていただけたら幸いです。
『ピアノランドたのしいテクニック』下巻のペダルのレッスンをかいつまんでご紹介します。
また、中巻のポジション移動の続きとして、下巻では〈とぶ〉テクニックも学びます。
まずは、そこからご覧ください。
目次
●同時ペダルの次は、よく使われる切分ペダル、後踏みペダルも使い分けよう!
●4つめのポジション移動〈とぶ〉をマスターしよう♪
『ピアノランドたのしいテクニック』中巻で〈おひっこし〉〈ひろげる〉〈かぶせる・くぐらせる〉の3種類のポジション移動を学びましたね。
下巻では、〈とぶ〉という項目で、素早く近くにとぶ方法や、遠くにとぶ方法を、まずは身体の動きだけマスターしてからピアノで演奏するコツをまなびます(ここでも“二段階導入法”です!)
はじめに固定5指のポジションで弾いた音を、1本の指でノンレガートで〈とぶ〉練習です。
2度、3度という近い音を確実に素早く、タッチポイントで捉えられるよう、手の形をキープして手首を緩めたハンドタッチで演奏します。
『ピアノランドたのしいテクニック』下巻 レッスン1より 「少しとぶ」
次に、遠くへとぶための予備練習として、机の上でノイズなく「忍者の着地」でとぶ練習をして(テキスト7ページ)、白鍵黒鍵、どんな距離も自在にとべる練習「どこまで とぶの?」(8ページ)ができたら、次の「どんどん遠くへ」へいきましょう!
ミドルCから、鍵盤の一番右端のCまで鍵盤1つずつ遠くへとびます。
腕は脱力して、視線は次の鍵盤へ! タッチポイントは行き先に狙いを定めて、鍵盤の底の高さを意識します。
ミュージックデータに合わせてイン・テンポで〈とぶ〉練習をしましょう。
『ピアノランドたのしいテクニック』下巻 レッスン1より 「どんどん遠くへ」
子供達が憧れる「ラ・カンパネラ」は、この〈とぶ〉テクニック満載です。
少しずつ、確実に、よい音で〈とぶ〉練習をつづけましょう♪
千里の道も一歩から!
●ペダルを教えるときは、まず、同時ペダルから
ペダルをいつどのように教えるかというのはとても難しい問題で、『ピアノランドたのしいテクニック』以前には子供のためのペダルのテキストがほとんどなかったので、苦心して作りました。
まず、ペダルを踏むにはピアノの仕組みを知らなくてはなりませんから、中巻、下巻でピアノの構造、音が出る仕組みを学び、下巻のレッスン2では、3本のペダルの機能を調べ、学びます(アップライト、グランド、電子ピアノとの違い等)。
次に、ノイズの無い踏み方、あげ方のコツを体得し、音楽の邪魔をしないペダリングの動きをマスターします。
そして、実際に楽譜の中でどのような場合に、どのペダルを用いるか、どのタイミングで踏んで、上げるかを、レッスン10で学んでいきます。
web連載では、その中から、同時、切分、後踏みの違いを学ぶ「レッスン10」からの抜粋でご覧いただきます。
では、発音と同時に踏む「同時ペダル」を使う曲をご覧ください。
下記のような場合は、小節はじめの1拍めの左手が和声の要の音ですから、その音を響かせるためにペダルを用います。
『たのしいテクニック』下巻より レッスン10 「夜のうたげ」
ペダルの踏み方には沢山の方法があり、例えば「同時ペダル」を使うとしても、同じ曲のどこでどのように使うかはピアニストの判断に任されています。
子供達にも、(もちろん、曲が書かれた頃のスタイルや楽曲分析をした上で)自分の耳で、感性で判断できるようになって欲しいと願いを込め、正解は1つではないことを知ってもらいたいと思い、この曲を作りました。
上記のように、同時ペダルを使う場所を3通りの例で踏み分けてみて、その可能性を感じてみてください。
動画でも、ペダルの違いがわかるでしょうか。
打鍵の瞬間の弦の振動を捉える同時ペダルは、和声を豊かに響かせることができます。
踏み遅れないようにしましょう!
●同時ペダルの次は、よく使われる切分ペダル、後踏みペダルも使い分けよう!
次は、よく使われる「切分ペダル」のタイミングを覚えましょう!
『たのしいテクニック』下巻より レッスン10「切分ペダル」「あとふみペダル」
切分ペダルは、コードの変わり目等で次の音にレガートに移るために踏むペダルです。
前の音の余韻を伸ばし、次の音と混じらないようにするために、踏み替えのタイミングにちょっとしたコツが必要です。
そのために、このような練習方法を用いて身体にタイミングを覚えさせましょう。
動画では、切分ペダルのタイミング練習を紹介します。
この他に、私が子供達にタイミングを意識してもらうために名前をつけた「後踏みペダル」の練習も、「切分ペダル」と同じ要領で行なってください。
発音よりもどれくらい遅れて踏むかによって、音の表情が変わります。
ほんの少しだけ音の余韻が欲しいとき、減衰する音が痩せないようにしたいとき、あからさまにペダルを踏んだことがわからないようにしたいときなど、状況に応じて使うペダルです。
先程の動画を参考に、後踏みペダルを踏むタイミングを変えて、実践してみてください。
それでは、切分ペダルを使った例として「静かな祈り」をご覧ください。
三声の横の流れを大切に、ノイズなく静かに踏む練習(タイトルからイメージできますね!)をしましょう♪
『たのしいテクニック』下巻より レッスン10 「静かな祈り」
ペダルの使い方について書いてきましたが、ペダルを使ってはいけないところも見分けなくてはなりません。
不用意にペダルを踏むと、音が濁って大変なことになるので、「いたずら」(45ページ)という曲で注意を促しています。
先生方には、半音階、順次進行、スタッカート、和声の変化等、ペダルを使うかどうか見極めるポイントについても、指導をお願いします。
このように、はじめてペダルを学ぶ子供達のために、最低限伝えたいことを教えておけば、楽曲の中で応用を指導していくことができます。
ペダル記号のあるところだけ踏めば事足りる訳ではないので、音楽全体を見据えた応用力が必要です。
響きをよく聴き、どこまで音の濁りを許すのか、許さないのか、レッスンの中で1つ1つのケースを吟味する習慣をつけていってください。
●ペダルの魔術師、小原孝さんの演奏で「こころの旅」
最後に、さり気なくペダルを使った曲を、発表会用、併用曲集の『ピアノランドコンサート』下巻から選びました。
小原孝さんの演奏でお聴きください。
いかに響きを聴き、コントロールするか、全ては“耳”にかかっており、それを実現できる足の技術も大切なことがおわかりいただけると思います。
今年のピアノランドフェスティバルでも、小原孝さんをスペシャルゲストにお迎えします。
名古屋、熊本、西宮、札幌、東京公演で、生演奏をたっぷりとお楽しみください。
そして、みなさんも録音応募プロジェクトの連弾や作曲部門に参加しましょう!
ムジカノーヴァ4月号では、小原孝さんと樹原のピアノランドフェスティバルの対談が掲載され、録音応募で子供達が輝く様子も紹介しています。
小原孝さんと樹原涼子のユニット“HARA HARA 倶楽部”の震災支援コンサートvol.6が、4月29日(金・祝)に行なわれます。
そちらにも、ぜひお出かけくださいませ!
※3月27日の「名器を巡る旅 第4回 ファツィオリで樹原作品を弾く・聴く・学ぶ」では、イタリアのピアノファツィオリの独特なクリアな響きとペダルをじっくりと観察してください。残席僅かです。
この春、大阪、広島、福岡のセミナーツアーが急遽決定、あと数カ所検討中ですので、スケジュール欄をチェックしていただければ幸いです。遠方のみなさまにお目にかかれますように!
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