第20回 現代のメソッドならではの取り組み 5音音階&5拍子、ドリアンモード
お久しぶりです!
年末年始に2回お休みしたので、1ヶ月ぶりに原稿を書いています。
とうとう、今年は「ピアノランド25周年」の年となりました。
出版時にピアノランドを使ったみなさんがそろそろ大人になり、ピアニストに、ピアノの先生に、ミュージシャンに、音大生になって活躍を始めています。
また、プロにならなくても、子供時代に『ピアノランド』を弾いて楽しかったこと、嬉しかったことを沢山覚えていて、趣味として続けている人が多いのも嬉しいことです。
ピアノを好きになること、新しい時代に専門家としてのピアノの基礎を身につけられる内容であることを音大の先生方に評価していただき、「ピアノランド」が教材研究授業で取り上げられ、感謝の気持ちでいっぱいです!
今回は『ピアノランド』4巻後半の曲をご紹介しますが、ぜひ、『ピアノランドたのしいテクニック』下巻を併用して、楽に、効果的に演奏する方法をマスターしていただければ幸いです。
テクニックの裏付け無しに、難しい曲に挑戦していては、いつまでたっても本当の意味で弾けるようにはなりません。
必ず、その楽曲に必要なテクニックを指導してから曲に取り組んでいただくことが必要です。
多くの子供達が「ピアノランド4、5巻まで弾くと、大抵のものが弾けるから(合唱の伴奏等も!)、ピアノを続けてよかった!」と言うそうです。
3巻まで連弾で学び、4、5巻で独り立ちするときに、ただ弾くだけではない、総合的な力がついてくることに、子供自身も気づくのでしょう。
何を目指して、何が出来るようになったか、これから何を学ぶべきか、頭の中を整理しながら進んでいけるのがピアノランドメソッド。
その、独り立ちに向けての時期に学ぶ『ピアノランド』4巻の後半の曲と、発表会用併用曲集『ピアノランドコンサート』下巻から3曲を抜粋してお話いたします。
今回の動画は、小原孝さんの演奏です!(ピアノランドフェスティバルより)
目次
●【揺るぎないテンポ感・近現代の準備】 連弾の主役はプリモ、先生は効果音 「草原のたたかい」
●【ロマン派への準備】 プリモがペダル、アゴーギグもリードしよう♪ 5拍子の「天の調べ」
●【モードに親しむ】 ドリアンモードのソロ曲で、魅せる演奏を 「風の平原」
●【揺るぎないテンポ感・近現代の準備】 連弾の主役はプリモ、先生は効果音「草原のたたかい」
いきなり、Dminor の♭Ⅵである「B♭7」という、ノンダイアトニックな(音階固有音でない)刺激の強いコードで、戦いの緊迫したシーンが始まります。(根音の♭を落として Bdim7と演奏するミスが多いのでご注意ください!)
子供達がリアルな感情を持てるよう、ゲーム音楽の戦闘シーンを彷彿とさせるタッチで作曲していますから、冒頭のコードは衝撃的に、2つめのA7はこの調の本来の属七ですから「行くよ〜!」という感じで Dm に向かいましょう。
音楽の脈拍であるテンポ感を完璧にするためには、連弾やミュージックデータでの練習が最適です。
慣れたら、どんどんテンポを上げて、自分の技術的な壁を知り、さらにテンポアップできるようテクニックを磨くことを目標とします。
「草原のたたかい」の左手は、どこまでも8分音符を正確にキープすること、右手の付点音符や16分音符との整合性が要求される曲です。
テンポが遅すぎると緊張感が出ないので、子ども自身が自然とテンポアップを目指したくなることも、上達を促す大きな要素です。
自由に演奏するためには、テクニックが必要なことを、ピアノランドの曲は次々につきつけていきます。
メロディのアーティキュレーションの表情を大切に、コードの進行が音楽を運ぶことを意識して、4手ならではのスリルを味わえるよう連弾しましょう!
先生のセコンドの裏拍が正確であれば、プリモは自信を持って打鍵することができます。
プリモ右手がメロディ、左手は伴奏、セコンドのラインはオブリガート、効果音的な要素です。
「草原のたたかい」『ピアノランド』4巻より 演奏:小原孝/樹原涼子
揺るぎないテンポ感をつけ、プリモとセコンドパートががお互いを聴き合い、反応し合って音楽を作り上げていくことが大切です。
テンポ感、リズム感をつけるためには、ヘッドフォンでオーケストラパートの各楽器を1つずつ分けて聴いていくと、大変勉強になります。
特に、リズムパートのスネアだけを聴いて耳の訓練をしてから合わせると、ストリングスが入ってきてもテンポが乱れないので、メトロノームより緻密な練習が可能です。
(iPhoneやiPadにミュージックデータをダウンロードすることが可能です。詳細はオントモ・ヴィレッジのピアノランドの広場へ!)
●【ロマン派への準備】 プリモがペダル、アゴーギグもリードしよう♪ 5拍子の「天の調べ」
ロマン派の楽曲は、ピアノから豊かな倍音の響きを引き出すために、黒鍵の多い調で書かれたものが多いですね。
そこで、プリモは5つの黒鍵全てを使った五音音階で歌うようなメロディ(しかも5拍子!)で、自分の歌い方をセコンドに伝えてアゴーギグする(自然なテンポの伸び縮みで音楽の表情を出す)、さらにペダルも踏む!という連弾曲を書きました。
はじめは、正確なテンポで1小節に5つの音がひと塊になる5拍子の拍子感をしっかりと味わい、だんだんに畳み掛けたり緩めたり、テンポの表情を出していきます。
冒頭は、プリモ右手をセコンドが追いかけ、サビではプリモとセコンドが反行するフレーズで、“音と音との距離感の変化”を感じましょう。
連弾では、常に相手パートに耳を傾けながら、自分の主張も忘れず、積極的に音楽を作っていくことが肝心です。
ペダリングは、自分が弾いていない音までも考えて踏まなくてはなりませんから、子供にとってはとても貴重な経験となります。
『ピアノランド』4巻より 「天の調べ」
「天の調べ」 『ピアノランド』4巻より 演奏:小原孝/樹原涼子
●【モードに親しむ】 ドリアンモードのソロ曲で、魅せる演奏を 「風の平原」
モード、をご存知でしょうか?
今でこそ、モード、教会旋法、と言ったら「ああ、独特の響きの曲なんでしょう?」と、少しは分って下さる方が増えて来ましたが、25年前には、作編曲、ジャズ、古楽に詳しい方以外にはなかなか理解していただけなかったことも懐かしい想い出です。
モードは、音楽家にとって、とても大切な手法のひとつで、弾く人、聴く人に大きな影響を与える音列です。
ピアノランドシリーズには何種類ものモードが登場することや、様々なジャンルのリズムを取り入れていることが中村菊子先生に絶賛され、2002年に『レッスンハンドブック』という本で世界の29のメソッドの中に『ピアノランド』が登場して、嬉しかったことを思い出します。
この曲は、ドリアンモード(ドリア旋法)。中心音をGとする、Gドリアンモードです。
短調に似た、けれども短調にはない雰囲気を感じて、アウフタクトのスタッカートから1拍目の2分音符のテヌートの深さを味わいます。
左右の平行4度、5度のハーモニーと打楽器的なリズムが、決然と前に進む強い意志を感じさせるように演奏しましょう。
「風の平原」は、発表会で上演できるお話組曲「夢を追いかける少年の物語」の3曲目。
こちらのお話ページを朗読しながら、5曲を上演すると、とてもステキなコーナーになるので、ぜひ、演奏会や発表会でチャレンジしてみてください♪
この曲のミュージックデータは、パーカッションとストリングスが織りなす壮大なスケール感があり、発表会ではミュージックデータとの共演がおススメです。
『ピアノランドコンサート』より「風の平原」
「風の平原」 『ピアノランドコンサート』下巻より 演奏:小原孝
今回は、2012年と2015年のピアノランドフェスティバルの映像をご覧いただきました。
『ピアノランド』シリーズの曲を、小原孝さんがいつも本気で演奏してくださっていることが本当に嬉しく、webでお聴きいただくことができるのは大きな喜びです。
今年のピアノランドフェスティバルも、どうぞ楽しみにお待ちくださいね!
◎ピアノランドコンサート勉強会のお知らせ
発表会用曲集『ピアノランドコンサート』上中下巻3冊のスペシャル勉強会を、ベーゼンドルファー東京でインペリアルと280の2台を使って開催します。2月18日(木)から6回シリーズ♪ ぜひどうぞ! 残席2名です♪ 詳細はこちら。
公開日: