セミナー「連弾組曲は音楽の喜びそのものだ」めでたく終了!

10月10日は、この春からずっと書き続けて何とか夏の出版に間に合った連弾組曲集『時の旅』お披露目のセミナー「連弾組曲は音楽の喜びそのものだ」でした。秋の光の中で表参道は清々しい空気。会場のカワイ表参道には、沢山のお客様が各地から詰め掛けてくださいました。

表紙の何とも魅力的な写真は、遠藤湖舟さん。
音楽之友社より発売。

 

 

 

●何がめでたいかと言えば

あんなに大変な思いをして書いたのに(って、楽しかったんですけど、物理的には大変でした)、こうして2時間15分(正味2時間)のセミナーでお披露目できちゃうのは、簡単すぎないかと思ったり、毎晩孝之介と練習したのに、弾き終わるとアッという間で簡単すぎないかと思ったり(笑)。

でも、本番というのは、まさしくこのように、あっけなく終わるわけで、これがめでたいことなのであります。

最初は、いきなり曲集にいかずに30分の前置き。

ここでなぜモードを知っておいた方がいいのか、モードとは何か、今はどのように使われているのか等をてんこ盛りなのにお腹いっぱいにならないように伝えて(だって、これから演奏にはいるのですから、曲がメインでなくてはね!)、「小さな時間旅行」の予習タイムとしました。

ゲームをする前にはルールを知っておかなくちゃ楽しめないから、こうして、曲のしかけについて作曲家が解説するって、実は大事なことだと思うのです。

 

●なぜ前置きが大事か

夏の合宿でこれらの曲をささっと紹介する時間を作ったのですが、そのときに、
「モードの説明を受けた後では、曲の聴こえ方が明らかに変わりました。前は、何となく綺麗な曲と感じていたのが、どんな雰囲気なのかをじっくり味わえるようになったんです」
という感想をいただきました。そのときに確信しました。

例えば、「このおせんべにはエビが入っていますよ」と言われて食べたときと、そうと知らずに食べたときとで、美味しさの感じ方が変わるかもしれない。海老好きの私としては、前者は、「エビの何が入っているのかな? 一匹丸ごと? エキスだけ? あ、この風味と歯ごたえは……!」などと思って、何かを感じようとして食べると思うのです。しかし、後者であれば気づかずに食べた後、「言ってくれればよかったのに、エビが入ってたの? そういえばちょっとそんな感じしたかなぁ、残念!」と思うかもしれない。

そんなわけで、モードについての前置きで知識を得た皆さんは、モード組曲「小さな時間旅行」を聴くときには、モードの名前と響きと簡単な歴史とその重要性と中心音と特徴音がわかって聴けるようになっていて(あ!すごい、こんなに短時間で説明できてた私……)、とてもいい感じで集中していただけたのです。

●苦節20年?

やはり、小一時間でその辺りを伝えられたことを思うと、10年、20年前の私には到底説明できなかったレベルに達したのかなと、正直嬉しいです。

モードのしくみを四苦八苦して伝えたマスターコースやコード塾。
当初は、「そのときはわかったような気がするんですが……」
「(一応、聞いておこう。先生一生懸命だし……)」
「(本当に演奏に必要なのかしら、モードって……)」

という空気の中、諦めずに続けてきました。

事態が好転したのは、ようやく『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』を書き上げてからです。やはり、『プレ・ピアノランド』の発売のときと一緒で、「本がないと生徒や親御さんにに説明できない」との声の通り、テキストができたのでみんな大丈夫になったんですね!

理解してもらえなかったことがうず高く積み重なって、「何がどうできないのか、なぜわからないのか」を研究する日々があったから、短時間でわかりやすく解説するための「本」や「考え方」やその「導き方」や「例」やらがわかってくる。

理解してもらえないところから、私の工夫と努力が始まったと言えばわかりやすいかもしれません。わかってもらえないからって、音楽の美しさを伝えるのを投げ出すわけにはいきません。

 

今回、物足りないくらいサクサクと進んだのは、実は、その失敗の歴史の上にやっと出来上がったテキストとノウハウがあったから、と考えれば、これまでの受講生に心からお礼を言わなくてはなりません。本当に「わからない」と言い続けてくれて、ありがとうございます!

こうして、鍛えられながら、いいものができていくのだなと、ただ、魔法のようにポン!とそこに出来上がるのではないなと、ちょっとだけ自分を褒めてあげたい気持ちになりました。

 

 

●1つ目の連弾組曲「小さな時間旅行」

 

これは、子供達にモードの名前と響きを教えるために、タイトルの中ににモード名と雰囲気を折り込んだ小品で編んだ組曲です。もちろん、1曲丸ごとモードの響きを味わうことができるので、スポンジのような吸収力のある子供達はあっという間にモードを体験して自分のものにします。

セミナーにおいでになれなかった方は、楽譜の後ろの解説ページを必ずお読みくださいね! ついでに『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の「モード」についてしっかり読むとか、勉強会を受けていただけば鬼に金棒。でも、とにかく巻末の解説だけはね! 前置きが大事って書いた通り、どこがモードの特徴かわかったほうが、弾いても聴いても楽しいんです。

 

セミナーでは、孝之介がプリモ、私がセコンドを弾きました。美しく調律されたShigeru Kawaiの響きをよく聴きながら、“物語の世界”に入っていきます。

この組曲は特に音数が少ないので、一音の持つ意味が大きくクローズアップされるため、タッチ、各音のバランス、ペダルの踏み方上げ方(タイミング、スピード、深さ)のセンスが問われます。

「プリモがとても綺麗な音だったから、一緒に弾いていて楽しかったよ」と感謝をこめてねぎらった私に答えて、孝之介が言いました。

「今回の曲は、美しい音、綺麗な音でなければならない必要度が高い曲ばかりだったから、特に(タッチに)気をつけたよ」と。

なるほど、曲によって要求される音の透明度や質感は異なるので、それを理解して弾くことはとても大事ですね。もう、作曲家として活動している彼にとっては当たり前のことなのだと、ちょっと嬉しくなったり。

 

<曲目>

ドリアンボートに乗って

フリジアンの罠

リディアンドールの家

ミクソリディアンの活躍

 

1曲ごとに詳細なレジュメを作ったところ、みなさんがとても喜んでくださってとても嬉しい。楽譜にはここまで書くスペースがなかったので、これを保存版にしていただけたらと思います。

モードの特徴を生かして「お話」を作るのもとても楽しい時間でしたし、こうして聴いていただけて本当によかった。
お話を読みたい方は、音友のサイトで立ち読みもできます。

 

●2つめの連弾組曲「美しい時間」

人生を振り返ったときに、あんな時代があったとか、こんな気持ちになったなぁとか、思い出すことがありますか? いいことも悪いことも思い出の中で風化して、いつの日か、ある手触りのようなものだけが残るかもしれません。それを、音楽にしてみたのがこの組曲です。

全編モードなのは「星の時間」のみで、他は調性音楽です。転調や借用はやはり樹原流。その中に、ちらりとモードの香りをふりかけた曲もあります。

孝之介との共演は、1曲ずつの個性をしっかりと伝える楽しい時間となり、ただお手本を弾くというのではない、「こう弾きたい」という気持ちが見えたり、「こう思うけどどう?」と質問されているようだったり、「こうなんだね~」と共感しあったりと、いろんなやりとりを客席に感じていただけるものだったかと思います。

「ゆらぎ」や他の曲にも登場しますが、連弾なのに別々に弾くシーン。プリモだけで演奏するフレーズ&セコンドだけで演奏するフレーズは、まるで会話のように、互いを聴き合うから次の言葉が紡ぎ出されていきます。反応が反応を生む、ということをライブで感じてもらえる曲を書きたかったのです。だから、練習したものを固定化することを、ある意味喜ばない曲もある、ということをピアノの先生に知ってもらえたらいいなと思っています。伝わったかな?

演奏中に演技の指示があるのが、「楽興の時」。大好きなシューベルトにもこのタイトルがありますが、「曲を書いたら、もうこのタイトルしかなかった」と言ったら、多くの方が「本当だ!」と言ってくださいました。みなさん、どんな風に弾いてくださるかしらん。

誰かと弾かずにはいられない曲、またもう一度聴きたい曲、大切に楽譜を持っていたい曲。そんな風に育ってくれたら嬉しい。

あまり詳しく書くと長くなりすぎるのでこの辺で……。

 

 

<曲目>

ゆらぎ

青空の下で

楽興の時

星の時間

母の胸に

 

当日いただいた写真の前に……

ビッグニュースです!
お披露目した『時の旅』全曲と、『ラプソディ第1番』他、私の連弾曲を中心とした小原孝さんとのデュオ・コンサートを、来年2月24日(日)に音友ホールで開催していただけることになりました! 本格的なピアノのディオ・コンサートはこれが初めてなので、本当に楽しみです。まだ、チラシが出来ていませんが、チケットの発売が始まりました。詳細はこちらです。

2019年 2月 24日(日)16:00~

小原孝&樹原涼子 デュオ・コンサート〜 連弾で旅する珠玉の時間〜NEW

出演:小原孝/樹原涼子

音楽の友ホール(東京都新宿区)
▶︎お問い合わせ先
音楽之友社 出版部楽譜課 03 3235 2135
ピアノランドメイト事務局 03 5742 7542

 

終演後、お世話になったスタッフの皆さんとパチリ。
左からカワイ表参道の調律の小野寺さん、セミナー担当の甘利さん、『時の旅』の編集をしてくださった山本さん、樹原涼子、連弾のパートナーを務めた樹原孝之介、挿絵を描いてくださった本間ちひろさん、新しい営業担当の関根さん、そして長らく編集を担当してくださって今は営業部長さんの亀田さん。

 

サイン会にて。挿画の本間ちひろさん、取材の飯田有抄さん、樹原孝之介と。

 

サイン会終了! 勉強会受講のみなさんとパチリ。

 

名古屋から、勉強会講師の栗原先生が駆けつけてくださって♡

 

おいでいただいた皆様、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!
セミナーや楽譜の感想、お待ちしています♡

 

※モードに興味のある方は、関連ページもどうぞ。

モードの曲で【モードの名前も仕組みも教える方法】をレクチャーする『時の旅』発売記念セミナー

モードは過去から現代をつないでいるロープだと思う

勉強会情報

樹原涼子
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