モードの曲で【モードの名前も仕組みも教える方法】をレクチャーする『時の旅』発売記念セミナー

モードをご存知ですか? モードを教えられますか?
モードの曲でモードの名前も仕組みも教える方法をレクチャーするセミナーです。
あ、でも、新刊の連弾組曲集『時の旅』(音楽之友社)のお披露目セミナーでもあるのです。
ピアノの先生方が演奏会で弾ける例えば「ドリー」のような親しみやすい連弾を……と作ったのが5曲からなる組曲「美しい時間」。それなら、同じ楽譜に子供のための連弾組曲も入れよう!と閃いたのが、そう、モードの組曲! というわけでお話し付きの「小さな時間旅行」が完成。この2つの組曲で音楽の喜びを味わい尽くし、さらにモードもマスターしていただこうというセミナー。演奏とレクチャー、盛りだくさんの内容をお届けします。

2018年 10月 10日(水)10:30~12:45

連弾組曲は、音楽の喜びそのものだNEW

樹原涼子 新刊 連弾組曲集『時の旅』発売記念セミナー
カワイ表参道 03-3409-2511 ピアノランドメイト事務局 03-5742-7542

モードとは、教会旋法のことです。

教会旋法って聞いたことはあるけれど、いったいそれがどういうものを指すのか、その意味はハッキリわからない……という方がまだまだ多いかもしれません。中には「バルトークやサティやドビュッシーも使っていますね」とモード名をあげる方もいらして嬉しくなってしまうのですが、まだ、少数派かもしれません。

なぜ、モードの話をするのかと言えば、もちろん今例にあげた作曲家を始め、近現代ではどんどんモードが使われるようになってきたということもありますし、私自身は『ピアノランド』の頃から作品の中に沢山モードを使ってきました。10月10日のセミナーでは、そのモードの魅力としくみについて、子供達に伝えていく方法をお話しいたします。新刊『時の旅』の曲を使って、子供達にこんな風に伝えてね!というのがセミナー前半の大きなテーマとなります。2つの前置きの後、本題を書いています。どうぞお読みくださいね。

 

 

【前置き1】

歴史を遡れば、調性音楽ができる遥か以前にモード(教会旋法)は誕生しています。紀元前5世紀、プラトンは旋法の良し悪しについてエートス論の中に書いていますし、これらを利用することが民をコントロールする上で重要だと考えていました。紀元前4世紀、アリストテレスはドリア旋法は男性的で落ち着きがあるがフリギア旋法は興奮させやすくて感傷的である(のでよくない)と書いています。こうした文献に出逢うたび、作曲家である私は、それらはどのように用いられ、どんな楽器で奏でられ、民はどのように反応したのだろうかと興味津々となるわけです。こんなに大昔、キリスト誕生以前からモードが利用されていたのですね。

中世(4世紀~15世紀くらい)のカトリック教会で用いられた教会旋法。グレゴリア聖歌は多くの方がご存知でしょう。

そして、20世紀以降に使われている旋法は、当時と名前を同じくしていても(教会旋法はギリシャの地名にちなんだ名前を持っています)、今では全く異なる使われ方をするようになりましたが、時代が変わり、楽器が変わっても、音の並びに名付けられたモード名はその響きとともに親しまれ続け、私たち作曲家の貴重なアイテムの一つとして生き残っています。

今やモードは教会や宗教を離れ、一般に広く使われるようになり、クラシックのジャンルではもちろんのこと、ジャズやポップスでも使われています。先に書いたバルトークやサティやドビュッシーだけではなく、『ピアノランド』の中にも、それ以外の樹原涼子作品にも、そして、吉松隆、田中カレン他多くの日本人作曲家の作品にも使われています。

 

【前置き2】

その、教会旋法、モードというものを、ピアノを教えたり演奏したりしているみなさんに、もっと広く知っていただけたらいいなと思って書いたのが、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』という本です。これは、「わかる人にはわかる」ようで、おかげさまで2016年の出版以来早いペースで版をを重ねています。

この本は、ハノンに代わる本を目指して作りました。テトラコードでスケールのしくみを覚え五度圏をマスター、長短全調のしくみを覚えることからスタート、長短それぞれに3種類の美しいカデンツで(ハノンのカデンツは終止形の一例でしかない)、様々なカデンツへの耳を開きます。そして、調性のないスケールも取り上げています。半音階、全音音階、ディミニッシュトスケール。それに加えて、ペンタトニックスケールの項では、日本の音階を取り上げました。せっかく音楽を学ぶのなら、リベラルアーツとしての側面も大切にして、「弾く」ことだけではなくバランスのとれた知識も伝えていきたいと思うのです。

とするなら、当然、教会旋法、モードも取り上げないわけにはいきません。西洋音楽を学ぶのに、避けては通れないモード。それでも、この知識なしになんとか来てしまった人が多いことを考え、子供に教えながら先生自身がもう一度きちんとモードを学べるように(受験勉強でササッと触れたのみの人が多い)とページを割きました。

何しろ、12半音階上の全ての音から7つのモードが考えられるわけですから、84種類全てのモードを指使い付きで網羅するという、とてもマニアックな本になってしまいました。それでも、ドビュッシーの研究で名高い青柳いづみこ先生からは近現代の作品の中のモードの音の“つかみ”がわかりやすくてとてもいいと感想をいただきましたし、哲学者の千葉雅也さんは全てのモードが指使い付きで出ていることを喜ばれたりと、思わぬ方面からもお褒めの言葉をいただきました。

やはり、西洋音楽を教えるのだったら、基礎知識として知っておきましょう、モードのこと。少なくとも、ピアノという楽器を教えるのなら、その歴史上欠かせないのがモードです。つい先日、バッハのインベンションのセミナーで上杉春雄氏にお会いした折、私がモードの本を書いたことを知って、氏もモードの重要性について思うところがお有りのようで大変興味をもってくださいました。専門家が口を揃えて「必要なこと」だと考えるモード。ぜひぜひ、早く、モードが一般常識となりますように! その日のためにも、私はこのセミナーを大切なものと位置付けています。理論だけではなく、実際の曲からモードを学ぶことで、モードの響きを身につけていただければ幸いです。

 

 

 

【本題】

やっと、本題になりました。樹原涼子は、モードのためだけにこの連弾組曲集『時の旅』を書いたわけではありません。純粋に美しい連弾曲を書くという目的で編んだ曲集です。その中に、欲張りにもほどがあるのですが、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』のモードの部分を美しい楽曲で、しかも、お話し付きの素敵な曲で子供達に伝えよう、教えながらモードに詳しい先生になってもらおう! と計画したのです。

この曲集には2つの連弾組曲があり、1つ目がモードを使った子供のための「小さな時間旅行」です。7つのモードの中から非常に重要な4つを使ったお話組曲(残りの3つについては、なぜ省かれているか、セミナーでお伝えします)。主人公の女の子は、これらの曲とともに時間旅行をするのです。

連弾組曲「小さな時間旅行」 “A little time trip”suite for four hands

Ⅰ ドリアンボートに乗って On a Dorian boat

Ⅱ フリジアンの罠 Phrygian trap

Ⅲ リディアンドールの家 A house of Lydian doll

Ⅳ ミクソリディアンの活躍 Mixolydian’s success

タイトルの中にモード名を入れ、モードの特徴となる音をさりげなく配置したので、そのモードの名前と響きを子供は絶対忘れないでしょう。心に残る曲を弾いたら、大切なモードまで覚えてしまった……という結果になるのは、とても素晴らしい計画だと思いませんか?
しかも、音数の少なさは、響きの美しさとリズムの面白さ、ペダルの魅力を引き立て、即興演奏を学べるポイントまで作っておきました。いかがでしょうか?

後半の時間は、2つ目の組曲「美しい時間」を解説、演奏します。実は、5曲のうちの1曲に「小さな時間旅行」に入れなかったモードを1つ、ひっそりと滑り込ませていて、「おお!」となる予定です。この曲は、つい先日のピアノランドフェスティバルで小原孝さんと連弾で演奏しました。みなさんも、パートナーと心開いて楽しく演奏していただけたら幸いです。

連弾組曲「美しい時間」 “A beautiful moment”suite for four hands
人生の様々な時間を彩る“時”を、樹原涼子ならではの連弾で表現した大人のための珠玉の5曲。

Ⅰ ゆらぎ Fluctuation

Ⅱ 青空の下で Under the blue sky

Ⅲ 星の時間 Time of the stars

Ⅳ 楽興の時 Moment musical

Ⅴ 母の胸に On my mother’s chest
 ~左手と左手のために~ a piece for two left hands 

後半は、連弾曲の分析方法、4手のバランス、ペダリングの様々な技術、譲り合うのか主張し合うのか寄り添うのかという、音楽に応じた見せ方等、じっくり取り組みます。調性音楽とモードとの違いにスポットを当て、ピアノから美しい「倍音」を響かせ、その響きの魅力にも迫ります。

純粋に、連弾曲を楽しむためにおいでいただくのも大歓迎です。発表会の選曲にも参考になります。

ただ、せっかくですから、モードについて、広く興味を持っていただきたく、どうしても、今回のセミナーについて前もって解説をしたく、日記を書きました。すでに、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』のセミナーや勉強会を受講された方は、ご自身の耳の成長を確かめにいらしてください。初めての方は、子供のための曲からスタートしますので、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の解説をじっくり聞いいて、モードに慣れていってください。

ああ、とても楽しみです! 10月10日、多くの皆様のご参加をお待ちしています。

 

 

※【前置き1】で紀元前後のモードの話をしましたが、このあたりは、哲学の中での音楽の位置付けと切り離すわけにいかないところです。最近出版された『音楽を考える人のための基本文献34』(アルテス出版)をご覧いただくと参考になります。

 

 

 

樹原涼子
PAGE TOP ↑
single-diary.php