なぜ、これまでモードが置き去りにされていたのだろう? 『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』にモードを入れた理由
昨日は、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』を書かずにはいられなかった理由を切々と書きました。
話は、「スケール」だけで終ったので、今回「モード」について書きます。
モードの手法で書かれた曲を、モードと認識して演奏していますか?
モードを習ったことがありますか?
モードについて勉強したことがありますか?
●「モード」って、本当はみんな聴いたことがあるから大丈夫♪♪♪
モード(教会旋法)は、受験用の楽典の本や読み物で軽く触れた程度という方は多いと思いますが、モードを使った曲と結びつけて学んだり習ったりしたことがある方はとても少ないと思います。
訳がわからないから触れない、興味がない、という方、ちょっと待ってください!
すでにあなたはモードの曲を聴いたり演奏したりしたことがあるし(多分、いえ絶対!)、モードって覚えてみると「な〜んだ! そんなことだったの!簡単じゃない」と言うかもしれないし、モードで曲を作って遊びましょうね!と誘ったら「とんでもない!」と言いながらもすぐに夢中になってしまうし、結局は「モード、美しいですね〜。わかると楽しいですね♪ハマりました!」となっていく予定です。はい。
あなたが「そうとは知らずにすでに触れていたもの」の正体を知りたくありませんか?
例えば、『ピアノランド』3巻の下記の曲はドリアンモードで書きました!
一見「ニ短調」、実は「レミファソラシドレ」というドリアンモード。
シ♭を使わないことで不思議な雰囲気が醸し出されています。
「え? その半音の違いがわかれば、モードがわかるようになる?」
「なります!」
この他にも、ピアノランドシリーズ、樹原涼子のピアノ曲集、バルトークやサティなどを例に、モードが使われている曲を本文で紹介しています。
アイオニアンモード、ドリアンモード、フリジアンモード、リディアンモード、ミクソリディアンモード、エオリアンモード、ロクリアンモードのしくみと特徴、曲例があるとても親切な本です。
●時代とともに、常識も変わっていく いえ、常識を変えなくては!
その昔(おそらく2000年頃)『ピアノランド』や『ピアノランドコンサート』をご覧になった中村菊子先生が、「モードも全音音階もロックンロールもあって、素晴らしいじゃない」とお電話をくださったことが思い出されます。
当時、中村菊子先生しか、そんなことを仰る先生はありませんでした。
ピアノの先生にとって「モード」はまだ、一般的ではなかった時代、世界のピアノ教育をご覧になって沢山の楽譜を日本語に翻訳されていた菊子先生だからこそわかっていただけたのでした。
今でもモードは一般的とは言えないかもしれませんが、少なくとも、私が教えたみなさんにはモードの魅力を必死で伝えてきました。
さらに言えば、モード以前に抱いた「コードがピアノの先生の一般常識となるように広めたい」という私の願いは、コード塾とコード勉強会、今では“聴きとり術”勉強会もできて、目標の半分くらいのイメージではありますが叶いつつあると思っているので、次のステップへ行こうと思ったのです。
モードも、本気になって広めていけば、理解してくださる方はどんどん増えていくはず。
例えば、ヘ長調の曲を弾くとき、そのことを理解できずに演奏するピアノの先生はいません。
同じように、作曲家が「この曲はミクソリディアンモードで書いた」のなら、弾く人にも「ああ、ミクソリディアンモードで書かれているのね」と思ってもらえたら嬉しいし、レッスンで「これはミクソリディアンモードで書かれていてね、特徴はね……」と説明していただけたらもっと嬉しい。
「何と言っても、作曲家の考えをわかりやすく解説することが先生の役目ですから、勉強しなくちゃね!私達」となったらいいな〜。
ちなみに、『ピアノランド』4巻の「ペンギン」や5巻の「月夜の晩のおながざるの踊り」はミクソリディアンモードです。
医療でもスポーツでもどんなジャンルであっても、時代とともに専門分野の常識は変わっていきます。
それは、研究する人がいて、広める人がいて、初めて実現することですから、ピアノの先生にその元となる情報に日常的に触れていただけるようにしたいと強く思いました。
もし、モードだけの本を書いたとしても、興味のある人しか手に取らないでしょう?
だから、スケールとアルペジオという、一見一般的に見えるテクニック本のような体裁の中に、モードも入れてしまいました!
ふふふ。この目論みは成功します。させます。
「モードに用はない、スケールを弾こう」と練習した後、ふと魔がさしたように(笑)、モードのページも見たり弾いたりする人が出てくるでしょう。
読んでいるうちに、「もしかして、知っておいた方がいいのかも。ちょっと弾いてみよう」となればしめしめ♪
●ピアニストのみなさんに大好評なのは、モードのカタログです
調性音楽に慣れた耳には、モードで書かれた曲はちょっと変わった感じに聴こえます。
聴き慣れた長調や短調のスケールではなく、どこか不思議な音が混じっていて、その異物感のようなものが「落ち着かない」とか「風情がある」とか「懐かしい」とか、なんだか聴く人の心に影響を与えます。
曲の色が変わったような感じ、とでも言いましょうか。
そう、写真を撮るときに普通のカラーではなく、セピア色にしたり、白黒にしたり、露出を調節したりすると印象が変わるように。
流石にピアニストのみなさんはモードについてもよくご存知で興味をもっていらっしゃるので、
「一目ですぐに目的のモードが探せて便利! ありがとう」
「近現代の作曲家はあちこちでモードを使うから、パッと指のつかみがわかりやすくていいですね」
「すべての音から始まるモードが“カタログ”になっているから、助かる〜」
等々、感想をいただいています。
ピアノの先生方からは、
「モードはどうやって勉強したらいいのかわからなかったので、嬉しいです。ありがとうございます」
「まず、私が勉強してから教えます。セミナーを聞けばわかるでしょうか」
「曲例があるから、あの曲もそう(モード)なんだ〜と思いました」
等々。
これまでは「グレゴリオ聖歌が好きで合唱をしていました」とか、「ジャズを勉強してモードでアドリブしてます」とか、「音楽家には必要ですよね!」という方を除いて、多くの方がスルーしてきた「モード」。
そんなかわいそうな「モード」に陽が当たるようになりますように!
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2016年 9月 27日(火)10:30
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次回は、『ピアノランド スケール・モード・アルペジオ』の3つめ、「コード&アルペジオ」をどうして書かなければならなかったかを綴ります。