熊本公演❤️《樹原涼子》を弾きたいシリーズ ❤️宮谷理香さんをお迎えして
約1週間の旅を終えて、羽田へ向かう空の上で書いています。
2018年の10月は、私にとって忘れられない月となるでしょう。
樹原作品をショパン国際ピアノコンクール第5位入賞の宮谷さんが演奏してくださるというので多くの方に興味を持っていただき、沢山の方にお目にかかることができました。
まず、この1週間の様子は……。
25日 品川駅から姫路へ移動、
26日 姫路のやぎ楽器主催のセミナー「プロフェッショナルな先生になるために」開催。22年ぶりの姫路でのセミナー終了後、倉敷へ移動。
27日 【《樹原涼子》を弾きたいシリーズ トーク&コンサート ゲスト宮谷理香】がスタート。初日は倉敷公演。ジーンズホールにて、被災した方やお子さん達も来場。
28日 大阪公演。サロン・ドゥ・アヴェンヌで熱心な先生方に囲まれて。
29日 熊本にて宮谷さんの個人レッスン、リハーサル、打ち合わせ。
30日 熊本公演。サロンDOLCEにベヒシュタインを持ち込んでの故郷での公演。
31日 両親に面会後、熊本空港から羽田へ。
どこで何をしたのかあらすじだけなら数行で書けますが、とても言葉では言い表せない変化がありました。このツアーに出る前と今では、樹原涼子は随分と成長したのではないかと思える1週間を過ごし、ああ、いくつになってもどんどん変わっていけるっていいぁと思いました。これは、ご一緒した宮谷さんから受けた影響はもちろんのこと、コンサートを主催してくださった方々の深い気持ちに触れ、お客様の言葉や涙に触れ、心の深いところが大きく熱く強くなったように感じています。
* * *
熊本でのコンサートのときはいつも、母が楽しみにしていてくれたことを思い出します。
熊本公演の報告の前に、少し、母のことを書きます。
このコンサートを母に見せたかった、と思うだけで涙が溢れそうなので、公演中は父の話はしたものの母の話はできませんでした。小さい頃からピアノを習わせてくれた母のおかげで今日があることを思うと、母がもしこの会場で、宮谷さんが演奏される私の曲を聴くことができたとしたら、どんなに喜んでくれたかと思うのです。
母は病院では寝たきりだったのですが、老健施設での手厚いリハビリのおかげで、日中少しの時間はバギー型で首が固定できる大型の車椅子を押してもらい、広い施設内を移動できるようになりました。もちろん外には出ることはできませんが、表情も明るくなり、時折言葉が出るようになってきました。
今日は、空港に行く前に面会に行って、コンサートがうまく言ったことを報告すると、ハッキリと「よかったね」と言って見つめてくれました。もう、この1週間の苦労が報われたような嬉しさが全身を包みました。
元気だった頃の母のダメ出しは、メイク、衣装、歩き方、演奏、トーク、あらゆることが含まれていました。コンサート終了後に母の言葉を聞くのが嬉しいような怖いような(笑)、身内ならではの遠慮のない指摘はとても有り難く、「次は文句言わせないから!」と思ったりしたものでした。ですが、そのうち「今日の〇〇はよかった。ただ、ここは~」とダメ出しが減ってきて、あるとき「今日は全てよかった。言うこと無し」と言われてびっくり。母が歳をとったのか、私も年の功で諸々改善できた結果なのか、その両方なのかと嬉しいような手応えがないような……。
そして、コンサート会場へ来ることもできなくなった母が、やはり、私の音楽活動をどんなに楽しみにしていてくれたのかと、8月に施設でコンサートを開いたときの喜びようを思い出しました。あれから、少し元気になってくれたような気がするのですが、音楽の力はやはり大きい。
今回は母のイヤリングを身につけ、父に捧げた「やさしいまなざし」(母を看病する父のやさしいまなざしに打たれて書いた曲)を宮谷さんが演奏されるのを、ステージ上で聴くことができました。私の耳を通して、母の心にもきっと響いたはずだと、母の笑顔を見て思いました。
* * *
『夢の中の夢』の心を映す三部作「笑顔・もの想い・鏡」や「バリエーション」
『やさしいまなざし』から「森を吹き渡る風」光の三部作「星・星の声・光」。
トークタイム。ショパン国際ピアノコンクールのお話や作曲家と演奏家の関係など、話は尽きません。
父に捧げた『やさしいまなざし』について。
「この表紙は、涼子さんのご実家の庭にそっくりなんですって?」
本間ちひろさんが、私の曲を全て聴いて想像で書いてくださった絵が、実家の庭そのものだった!という話に会場の皆さんもびっくりされていました。
そして「やさしいまなざし」は、どこまでもやさしく美しく愛おしい音色で、胸の奥深くに届く演奏でした。
素敵なサロンDOLCE。
後半は、ショパンの他、親愛なる宮谷理香に捧ぐ「巡る」と「花」を演奏していただきました。
宮谷さんのために書いた「捧ぐ」はとても時間をかけて書いた作品で、それは、宮谷さんに捧げるという緊張感があったから。そして、宮谷さんは、「エリーゼのためにって、エリーゼちゃんは曲を捧げてもらっていいなぁ。誰か理香に書いてくれないかなぁって思ってました!」とのこと。よかった!
とても素敵な「巡る」の演奏に、お客様も作曲者もうっとり。
「花」は、ゲームの主題歌にとライブを聴いたゲーム作家桝田省治さんの熱い希望で承諾したら、タイトルが「俺の屍を越えてゆけ」……と恐ろしいもので困った話や、樹原涼子作品で唯一カラオケに入っている曲だと紹介したり。
元々は「歌」だったのをピアノソロバージョンに編曲。宮谷さんの演奏は、繊細でドラマティックで本当に素晴らしく胸に迫ってきました。
宮谷さんの演奏は、連日のコンサートでさらに凄みを増し、特に熊本会場では私がピアノ曲集を作曲するのに使っているのと同じベヒシュタインを運び込んでのコンサートということもあり、私のイメージが増幅されて豊かに輝いて広がっていくような気がしました。
宮谷さんの指先から生まれる音たち。
倍音の重なりや広がりが心地よく空間を満たしていきます。
作曲家が願うバランス以上のバランスで、それらは空気の中に溶け込んでいきます。
甘く切ない音も、限りなく美しいピアニッシモも、上り詰めていく激しさも、喜びも憂いも、いろんな人間の感情がピアノの音色の中に詰まっていて、それはコンサートが終わったあとも心に残り、一定の場所を占領して幸せな気持ちを持続させてくれます。
「翌日も、ずっとね、ずっと心のこの辺にあったかい、すてきなものがあるの。残っているのよ。消えないでここにあって、大変でも明日も頑張ろうって思えるのよ。ありがとう、コンサート開いてくれてありがとう」と、目を輝かせて伝えてくれた方があって、本当に嬉しくなりました。
私が書いたのは、そういう言葉では表せないようなもので、それを、音楽という形にしてみなさんに届けてくれた宮谷さんに、本当に感謝いたします。
アンコールで「君が笑えるように」を弾き語りしました。
そのあとは、連弾で新刊『時の旅』より「ゆらぎ」と『こころの小箱』から「明日はいい日だ!」の2曲を。
(お客様がお帰りになったあと、連弾しちゃったね❤️と、パチリ 笑)
お手伝いしてくださった熊本のピアノランド勉強会のみなさん、ありがとうございました!
サロンDOLCEのオーナー岡村仁美さん、調律の内川明さん(ピアノハープ社代表取締役社長)、お世話になりました!
また、宮谷理香さんの演奏で【《樹原涼子》を弾きたいシリーズ トーク&コンサート】を聴きたいとご希望をいただき、嬉しい気持ちでいっぱいです。来年もどこかで開催できますように!