熊本の益城町で、ケアコンサート
9月11日(日)、熊本地震で被害の大きかった益城町の杉堂に、ケアコンサートに伺いました。
6月19日に避難所となっていた城南スポーツセンター、月出小学校の2カ所で音楽の“炊き出しコンサート”(地元では、ケアコンサートをそう呼んでいます。音楽は心のご飯ですから)に行って以来、3ヶ月ぶりです。
杉堂地区は断層の近くだったため大変な被害で、自宅に住んでいる方は僅かとのこと。
少し離れた仮設住宅に住んでいる方達がコンサートを聴くためにわざわざ集会所まで足を運んでくださったそうです。
「くまもと音楽復興支援100人委員会」の坂本さんの車で連弾のアシスタントをしてくれる勉強会講師の中川さんと一緒に、杉堂の集会所に向かう道中、傾いたり潰れたりして手つかずの家屋、瓦礫の山、山崩れが起きた斜面、石垣がくずれないように積まれた土嚢などを見ながら、すれ違うこともできない山道を前方の車の後をソロソロと登っていきながら思いました。
いつものコンサートとはもちろん違う、前回の炊き出しコンサートとも違う緊張感。
プログラムの心づもりはありましたが、集まった方の顔を見て、流れを感じて演奏しながら次の曲を決めよう、と。
ボランティアで伺うコンサートは音楽家としての全てが問われる、と思います。
生半可な気持ちで伺う訳にはいきません。
このコンサートは、福岡からボランティアで杉堂地区に通っている大久保さんという方がコーディネートしてくださって、会場前で名刺交換。
誰かのために何かをしないでいられない人が何人も集まってやっと1つのコンサートが実現できるのですから、リレーのアンカーのような気持ちで頑張らなくては!
会場には、ご近所だった方達が久しぶりに会えた嬉しさと、コンサートへの期待感がいっぱいです。
30畳の会場に、約30人。電子ピアノのセッティングが終ったらすぐにコンサートがスタートしました。
自己紹介代わりに『ピアノランド』1巻の「どどどど どーなつ」を弾いて、みなさんと私の緊張も解けました(笑)。
「今日はみなさんと音楽を楽しみたいので、連弾の曲でスタートします。次男孝之介が作った『ふたりで弾こう!ピアノびっくり箱』の連弾で2つのアレンジを楽しんでください。ご一緒に歌ってくださいね!」と、「エーデルワイス」「紅葉」「夕焼け小焼け」「古時計」を連弾。
「歌おうと思った瞬間に涙が出ました。これまで、大きなストレスがあったことに、はじめて気づきました」と終了後に伺いましたが、本当に、演奏していると、みなさんの声、歌っていない方の心の声までも聞こえてくるような、そんな不思議な時間をご一緒することができました。
みなさんの歌声に、思わず拍手!
歌っているうちにみなさんの表情がぐっと明るくなったので、手話をしながら歌っていただくのがいいかもしれない! と閃きました。
『ピアノランド』3巻の「ともだちになりたい」の手話で、「ボンジュール」で投げキッスをするところで、笑い声が♪
女性の方の反応は素早いですね! はじめはちょっと照れていた男の方達も私と目が合うと手を動かしてくださって、初めての曲でも一生懸命やってみよう!という気持ちがどんどんみなぎってきたのが嬉しい♪
すっかり打ち解けたところで、「子供達へのバラード」と「花」を弾き語りして、40分の予定が1時間近くのコンサートになりました。
もう、マイクだのリバーブだのグランドピアノでなければだの「そういうことではない」本番!
コンサートをした集会所。
とても暑い日でしたが、冷房があって助かりました!
記念撮影タイム♪
「地震以来何の楽しみもなく、初めて楽しいと思いました」
「ピアノという楽器があることを忘れていました。ああ、こういう音だったんだなと。電子ピアノでも、音量差が凄くあって胸に迫りました。」
「楽しかった〜。ありがとうございました。何度でも来てください」
「母の気持ちを歌った歌の歌詞、いいですね。涙が出ました」
等々、コンサートの感想も伺いましたが、みなさんとお茶を飲んで話しているうちに、
「1回めの地震では避難したとに、2回めの地震で家の下敷きになった」と、親しい方が亡くなった話しを伺ったり、
「避難所や仮設におっても、他の土地には行きたくなか、ここが一番、みんながおるけん」と、地域の結びつきの強さに驚いたり、
「3ヶ月、東京の息子のところにおったとですが、ここがよかけんもどってきたら、みんながもう帰って来んと思いよった」と、91歳の女性のたくましさと地元愛に感動したり。
帰り道、音楽の力は凄いなと思いました。
左は、このコンサートをコーディネートしてくれた福岡から杉堂にボランティアで通われている大久保さん。
写真も全て提供していただきました。ありがとうございました!
音楽で心の有り様が変わる方がいる。そして、私自身もまた音楽に生かされている。
また、時間を作って炊き出しコンサートに伺おうと心から思いました。
被災地に心を寄せてくださる皆様に、御礼申し上げます。