昨日は綿のような雪が舞い、うぐいすが鳴き、みぞれが降りました。
このところ、ピアノランドスクールは春休みなので、演奏会前のピアノの先生たちのレッスンや、遠方から来る子どもたちのレッスンをしています。
ショパンもベートーベンもバッハも、上手に弾けるように習いに行く…。たしかに、向上心があって一生懸命弾くのは大切なことですね。でも、それだけじゃなくて、もっともっと、その作品に自分から近づいていく姿勢があるといいなと思います。もちろん、演奏会までに何とかしてあげるのが私の仕事ではありますが…。はじめの一音から、自分が音楽になりきることの大切さを、伝えようとしているこの頃です。
現代では、作る人と弾く人が分業で、すごく離れてしまっていますね。全般的に言えることですが、弾く人は、表面的に音符や楽語をなぞるのではなくて、作曲家の気持ちをもっと理解しようとした方がいいと思います。
例えば、一流のシェフのオムレツを食べたときに、自分で作るオムレツとの歴然たる差に感動したとしましょう。なんて美しく輝やくような黄金色! 中はとろりとやや半熟で絶妙なバランス! 口の中に広がるこの幸せを味わうとき、ただおいしい!というだけでなく、シェフの卵への愛情やら、フライパンの熱し方や油の回し方、多分、手首の使い方とか…いろんなことを含めてすごい!と感動していると思うのです。参りました、おいしい!って。
だから、大作曲家の曲を弾くときも、具体的にどこがどうすばらしいのか、自分でもリアルタイムに味わい、感動して弾けたらいいな、と思うのです。
4月2日のセミナーでは、そのあたりを越えていけるような感性の育て方、クリエイティブなひらめきをすくい取って音楽にしていくプロセスを、お見せできたらと思います。作る人に近づくために、作ってみる…。はじめは焦げたオムレツでもいいのですから!
私も、作曲しようというセミナーは初めての試みですが、「ピアノの先生たちのこれから」につながるものではないかと、ビビビッときています。
資料整理をしながら何気なくかけたルービンシュタインのショパンは、最高に楽しくて、ついつい聴きほれて手が止まってしまいました。そう、楽しくなければ音楽じゃないと、当たり前のことに何だか感動してしまいました。
春休み明けに生徒たちがレッスンにきたら、もう一度新鮮な気持ちで、みんなが音楽を楽しんでいるか、作曲家の気持ちに近づこうとしているか、観察しようと思います。
それでは、春を感じながら楽しい音楽を!