ドビュッシー没後100年に寄せて 青柳いづみこ先生のこと

青柳いづみこ先生の活動について書きます。

私は青柳いづみこ先生をとても尊敬していて、いつも皆さんをコンサートにお誘いしたり書籍やCDをおススメしています。

 

いづみこ先生の恩師である安川加壽子先生がフランス音楽を日本に紹介されたことは有名ですが、実は私も、小さい頃に熊本で安川先生の公開レッスンを受けたことがあります。そのときに、「スタッカートで手を上げるように」とご指導いただき、一生懸命手を跳ね上げたのがやり過ぎたのか、会場の先生方の笑いさざめく声がして、そのことだけをよく覚えているのです……。

ですが、いづみこ先生のDVDブック『ドビュッシー ピアノ曲の秘密』を読んでいて、あれはp.21の「ポワニエ(手首)」「グード(肘)」と呼ばれるスタッカートを指導してくださっていたのでは!と、ハッとしました。そうなんです、あんなに鍵盤から手を離すスタッカートは初めての経験でした。あのとき、小さい私に伝えようとお手本を弾いてくださったのは、フランス式の、このテクニックだったのですね! あのレッスンの意味があの頃わかっていれば、と残念に思います。

と、そんな接点も感じながら、今日は青柳いづみこ先生の今年の活動について、勝手ながら応援の気持ちを込めて、書かせていただきます。もし、間違っていることがあれば、ご指摘くださいませ。詳しくは、直接先生のホームページをご覧ください。

 

青柳いづみこ先生は、ドビュッシーが音楽史において果たした大きな役割について、一貫して発信しつづけていらっしゃいます。私は、そのことについて、とても素晴らしいことだと敬服しています。

私は、ドビュッシーや、フランス音楽に関して専門に勉強してきたわけではないので、先生が出版されている書籍やwebの文章、コンサートやCDを通じて学ばせていただいていて、いつも、その驚くべき深さとそれぞれの関連性に気付かされ、知らないことを知る喜びを味わっています。しかも、いづみこ先生の視点を通して、系統立てて学べるというのはなんと幸せなことでしょう。

何かを好きになるときに、その分野の水先案内人をしてくれる人を上手くみつけられるかどうかで、その後の勉強に大きな差が出ます。私は、ずいぶん前にヤマハ銀座店での先生のドビュッシーのセミナーに伺って以来、その美しく知的な音楽と、汲めども尽きない泉のような知識とお話ぶりに感動して、スケジュールさえ合えば、コンサートに伺うようになりました。先生にお会いできてよかったと、心から思います。

 

その中でも、特に注目しているのが、長年に渡って企画されてきたコンサート群です。

あえて「群」と書きましたが、そうなんです、もう、物凄い期間を通して計画されてきたこのラインナップと言ったら!
https://ondine-i.net/tconcerts/concertinfo

2018年がドビュッシーの没後100年になることに合わせて、すべての歯車が合うように、着々とコンサートや出版やCDを企画されてきて、とうとう、今年その2018年を迎えたわけですから、もうこの壮大な計画は他の追随を許しません。

「ドビュッシーイヤーだから今年はドビュッシーをちょっと特集して……」などという生易しい甘っちょろい小手先の企画ではないのです。いづみこ先生のドビュッシーへの愛情は、なんと言ったらいいのでしょうか、音楽だけというのではなく、ドビュッシーという人が生きて音楽をしていたその時代も全て含めて、ドビュッシーの周りにあったもの全てに驚くべき興味を持って研究されてきたのであって、ドビュッシーといづみこ先生がほんの少し生まれた時代がずれていたために「会っていない、会うことができなかった」ことが(勝手に)残念でなりません。

こんなにも自分を深く理解してくれるピアニスト、文筆家が東洋の日本にいて、没後100年経っているというのにその死を悼み、ステージで演奏の後に涙を浮かべてくれるなんて(今年3月のドビュッシー没後100年「命日前日  メモリアル・コンサート」では、客席で友人たちと涙しました)、そして、数え切れないほどの文章と演奏とイベントをライフワークとされているなんて! ドビュッシーは空の上でどんな気持ちでいるのでしょうか。

 

あ、私の気持ちなどより、青柳いづみこ先生の年明け早々のコンサートをご紹介します。

 

コンサートは一期一会とはよく言いますが、1月11日の「アッシャー家の崩壊」は、またとないプログラムです。ぜひぜひ、ご一緒に聴きましょう!(樹原涼子のピアノランドメイト事務局にお申し込みいただいても結構です)

ドビュッシーはオペラへの憧れを強く持っていて、生前に「ペレアスとメリザンド」というオペラを1つだけ書きました。そして、亡くなる直前まで完成を夢見て果たせなかったのが「アッシャー家の崩壊」というこのオペラ。完成させることができなかったドビュッシーの無念を、青柳いづみこ先生が日本の地で晴らすって……本当に凄いことですよね!

 

 

エドガー・アラン・ポー生誕210年 

ドビュッシー 最後の夢「未完のオペラ アッシャー家の崩壊」
(コンサート形式による試補筆上演)

若き日から死の前年まで夢みた幻のオペラが迫真のテキストを活かす試補筆版で蘇る
交響詩「海」の6手2台版も必聴!

青柳いづみこHPからもチケットをお買い求めいただけます★

2019年01月11日(金) ハクジュホール

昼公演14:00開演(13:30開場)

夜公演19:00開演(18:30開場)

全席指定 一般4,500円(前売)、5,000円(当日)/学生2,000円

東京コンサーツ 03-3200-9755(平日10:00~18:00)

東京コンサーツウェブチケット

※東京コンサーツホームページにて予約、セブンイレブンで支払・受取ができます。

プログラム詳細は、こちらです。

先生自身の言葉で、このコンサートについて公式facebookページで10/31に解説されています。他の記事もとても興味深く、ぜひ覗いてみてくださいね!

 

 

そして、今年、驚くほどのペースで出版されたドビュッシー関連のCDと本たち。2018年だけでCDが2枚、本が4冊。
信じられますか? 割と働き者の私ですら、信じることができません。

出版の他に沢山のコンサート、トークイベント、レッスンや審査、取材旅行、雑誌の記事、番組出演、さらに来年以降の準備まで、人間業とは思えない時間をお過ごしと思われます。

そのどれもが一筋縄ではいかないような大仕事ばかりで、どれも本当に素晴らしくて、聴くだけでも、読むだけでも、先生のペースについていくのに必死です。

こんな宝物を次々に生み出していただいて、そうさせたドビュッシーの素晴らしさを思います。
形にしていくことの大変さを知っている私は、声を大にして言いたい。

みなさん、この類稀なる青柳いづみこ先生の仕事の一端に触れてください。
そして、できればどっぷり浸ってみましょう。

ドビュッシーがいたから、音楽は、それ以前と全く変わりました。

音楽界にとっての、大きな転換期を作った彼の世界に触れてこそ、その後の音楽にも理解が生まれます。

今の時代に生きている私たちにとって、ロマン派や古典、バロックの作曲家よりも身近なはずのドビュッシー。

生きているうちにはなかなか評価されなかった彼ですが、新しい美の概念を作ってくれたことに、音楽家の一人として、人類の一人として、深い感謝を捧げたいと思います。

 

それでは、青柳いづみこ先生の2018年の出版物をご紹介します。

CD クロード・ドビュッシーの墓 (2018年4月6日発売)
ドビュッシーの死を悼んでフランスの音楽雑誌に寄せられた、錚々たる作曲家たちの作品を集めて演奏されたもので、マニアックな、またとないCD。ブックレットも素晴らしい。

 

 

CD ドビュッシーの夢 (2018年5月7日発売)
「前奏曲集第1巻」の12の夢、「聖セバスチャンの殉教」の大伽藍(A.カプレによるピアノ編曲版)。ドビュッシーの愛したベヒシュタイン(1925年製)を使っての録音で、この世のものとは思えないほど美しい響きに包まれる、いづみこ先生のドビュッシー愛満載の1枚です。最後の「ミンストレル」までじっとして聴いてしまう、樹原愛聴盤。

 

 

『ドビュッシーのおもちゃ箱』学研プラス(2018年7月24日)
ドビュッシーが晩年に作曲した子供のためのバレエ音楽「おもちゃ箱」。朗読と筆者自身の演奏による絵本のような「おもちゃ箱」CD付き。ドビュッシーの知らない面を次々と見せてもらい、驚く!

 

 

『高橋悠治という怪物』河出書房新社(2018年9月25日)
作曲家、ピアニスト、そして批評家でもある高橋悠治さんについて書く、などということは、他に誰ができるでしょう。高橋さんご本人の希望で、青柳いづみこ先生との連弾が実現し、そしてこの本を書くこととなったそうですが、お二人の連弾リハーサルはもう壮絶(トークショーで映像を拝見してのけぞる……)。ピアニストとしての高橋悠治さんの大ファンでもある私としては、今年一番の「読むのが怖い本」。

 

 

ONTOMO MOOK 『ドビュッシー ピアノ曲の秘密』DVD付 音楽之友社(2018年10月25日)
ドビュッシーにどうやって取り組んだらいいかわからない人も、ドビュッシーファンも必見。ピアノ曲全ての年表は大変貴重ですし、8人ものキーパースンとの対談はどれも面白く、ドビュッシーを演奏するための6つの技法をベヒシュタインで演奏しながら解説するという、贅沢なDVD付き。何度も読み返したい、ピアノランドメイトで強力におススメしている本です。

 

 

『ドビュッシー 最後の1年』中央公論新社(2018年12月10日)
亡くなる前の1年はどんな風に過ごしていたか……に焦点を当てた、他の人ではとても思いつかない切り口で、ドビュッシー像に迫ります。まさか、年内にもう1冊出るなんて!と、腰を抜かしています。覚悟して読み進めなくてはなりません。

 

 

このような出版をつづけらた翌年の1月11日に「アッシャー家の崩壊」の公演があるのです。
皆さま、足を運ばないわけにはいきませんね!

 

この日記を書いたのは、友人をコンサートに誘おうと思ったのがきっかけでした。音楽関係ではない友人を誘ったら、「私たちにとってピアニストはみんなピアノが上手なんだろうと思うからわからないよね。涼子さんがいいっていうなら行ってみようかな。誰がどんな風にいいか教えてもらわないと、どれに行ったらいいのかわからないのよ」と。

なるほど、それではピアニスト「青柳いづみこ」やそのコンサートの説明を……と思ったら、こんなに長くなってしまいました……(笑)。私は夜の部に伺いますが、これを読んでおいでになった方はお声かけくださいね。昼の部は、私の『時の旅』勉強会を終えたメンバー他友人たちがたくさん聴きに行く予定です。楽しみです!

 

 

 

樹原涼子
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